遺言執行者の役割と責任|義務を怠るとどうなる?
遺言書を作成しても、その内容がスムーズに実現されるとは限りません。特に、遺言書に記載された内容が複雑な場合や、相続人間で対立がある場合は、遺言書の通りに手続きを進めることが困難になることがあります。
このような時、遺言書の内容を確実に実行する役割を担うのが**「遺言執行者」**です。
今回は、遺言執行者の役割と、その職務を果たす上で知っておくべき責任について解説します。
遺言執行者の職務とは
遺言執行者は、遺言書の内容を実現するために、以下のような幅広い職務を行います。
- 遺言執行者就任の通知: 遺言執行者に就任したら、遅滞なく相続人全員にその旨を通知します。
- 相続財産目録の作成・交付: 相続財産の全容を調査し、財産目録を作成して相続人に交付します。
- 遺言内容の実行: 不動産の名義変更や、預貯金の解約、株式の処分、遺贈の実行など、遺言書に書かれた内容を具体的に実現するための手続きを行います。
- 報告義務: 遺言執行の状況について、相続人からの求めに応じて報告する義務があります。
遺言執行者の責任と義務
遺言執行者は、相続人の代理人として、善意の管理者の注意義務(善管注意義務)をもって職務を遂行しなければなりません。
この義務を怠ると、以下のような責任を負うことになります。
- 損害賠償責任: 遺言執行者が職務を怠ったり、不適切な行為によって相続人に損害を与えた場合、その損害を賠償しなければなりません。
- 報酬の不支給: 遺言執行者には報酬が支払われますが、職務を怠った場合は、その報酬が減額されたり、まったく支払われなかったりすることがあります。
- 解任: 遺言執行者が職務を怠るなど、不適切な行為があった場合、利害関係者(相続人など)は家庭裁判所に遺言執行者の解任を申し立てることができます。
遺言執行者に関するよくある疑問
Q. 遺言執行者は誰でもなれるの?
遺言書で指定された人であれば、相続人や弁護士など、誰でも遺言執行者になることができます。ただし、指定された人が就任を拒否することも可能です。
Q. 遺言執行者は家庭裁判所の監督を受けるの?
遺言書で指定された遺言執行者は、基本的に家庭裁判所の直接的な指示や監督を受けません。しかし、職務を怠るなど不適切な行為があった場合は、家庭裁判所によって解任されることがあります。
Q. 遺言執行者の職務は具体的にどう進めるの?
遺言執行者は、遺言書の内容を法的に、そして事実に基づいて具体的に実行します。例えば、遺贈の対象となる不動産を第三者に売却し、その代金を遺贈する、といった行為も職務に含まれます。
遺言執行者は弁護士に依頼するのが最善の選択
遺言執行者の職務は、法的な知識だけでなく、相続人との調整能力や、煩雑な手続きをこなすための時間と労力が求められます。
ご自身で遺言執行者として職務を遂行することに不安がある場合は、弁護士に遺言執行を依頼することを強くお勧めします。
弁護士は、法律の専門家として、遺言執行者としての義務を正確に理解し、法的なリスクを回避しながら手続きを円滑に進めます。また、相続人との間で生じうるトラブルを未然に防ぎ、遺言者の最後の意思を確実に実現します。
相続に関するお悩みや、遺言執行者の職務についてご不安な方は、お気軽にご相談ください。