生前贈与と相続税対策のポイント

相続税の節税対策や、特定の方への財産承継を円滑に行うために、「生前贈与」や「遺贈」は非常に有効な手段です。しかし、贈与税や相続税の仕組みを理解し、法的に有効な形で贈与・遺贈を行うためには、専門的な知識が必要です。

当事務所は、お客様の財産状況やご希望を詳細に伺い、税理士とも連携しながら、最も効果的な生前贈与・遺贈のプランを提案・実行をサポートします。将来の相続を見据えた最適な対策を検討したい方ぜひご相談ください。

相続税対策としての生前贈与の重要性

相続は、故人の財産を法定相続人が引き継ぐ重要なプロセスですが、同時に多岐にわたる法的・税務的な問題が伴います。

特に、遺産分割を巡る親族間の争いは、精神的・経済的に大きな負担となることが少なくありません。このような相続問題を円滑に進め、将来の税負担を軽減するための有効な手段として、従来から生前贈与が注目されています。

相続問題と生前贈与の基本概念

生前贈与とは、被相続人(財産を遺す人)が生きている間に、自身の財産を特定の個人(子や孫など)に無償で与える行為を指します。これは、将来の相続財産を計画的に減らすことで、相続税の負担を軽減し、遺産分割トラブルを未然に防ぐための戦略的な選択肢となり得ます。

生前贈与と相続の最も根本的な違いは、財産を移譲する「タイミング」にあります。生前贈与は被相続人の存命中に行われるのに対し、相続は被相続人の死亡後に発生します。

また、納税手続きの対象者も異なり、生前贈与では財産を受け取った「受贈者」が、相続では「相続人または受遺者」が納税義務を負います。生前贈与の大きな利点の一つは、財産を生きているうちに渡すことで、相続発生時の争いを回避できる点です。

これにより、莫大な費用と時間を要する相続争いを未然に防ぐ効果が期待できます。

なぜ今、生前贈与が注目されるのか

近年、相続税の基礎控除額が引き下げられたことなどにより、相続税の課税対象となる人の割合が増加傾向にあります。これにより、多くの家庭で相続税対策の必要性が以前にも増して高まっています。

一般的なサラリーマン家庭においては、相続税の基礎控除(「3,000万円+600万円×法定相続人の数」)や配偶者税額軽減、小規模宅地等の特例といった優遇措置があるため、多額の遺産総額が見込まれない限り相続税が発生しないケースも少なくありません。

しかし、自身の資産状況を正確に把握しないまま生前贈与を行っても、期待する節税効果が得られない可能性があるため、まずは現状の資産状況を把握することが重要です。

不動産のように価値が高い資産は、生前贈与を適切に行うことで税負担を大きく軽減できる可能性があります。多額の相続税は、遺族に経済的な負担をかけるだけでなく、場合によっては不動産の売却を余儀なくされるケースも発生します。

そのため、計画的な生前贈与は、家族の将来を守る上で非常に重要視されています。

生前贈与は、贈与者が認知症などで判断能力を失う前に財産を移転することで、将来の財産管理や運用、処分に関するトラブル(例えば、預貯金口座の凍結など)を未然に防ぐ「認知症対策」としても非常に有効な手段です。

相続税の節税だけでなく、遺産分割トラブルの防止、認知症対策、特定の高額資産の計画的移転といった多角的なメリットを持っています。

 相続税対策としての生前贈与は、税制改正による持ち戻し期間の延長(最大7年)や、贈与者の意思能力の確保という観点から、早期かつ計画的に実行することが極めて重要です。

健康状態に不安を覚えてから慌てて贈与を行っても、期待する節税効果が得られない、あるいは贈与自体が無効と判断されるリスクが高まるため、余裕を持った計画が成功の鍵となります。

生前贈与と相続の基本を理解する

生前贈与と相続は、どちらも財産を次世代に引き継ぐ方法ですが、その仕組みや税務上の取り扱いには大きな違いがあります。これらの違いを正確に理解することが、適切な税務対策を講じる第一歩となります。

生前贈与と相続の違い(タイミング、納税義務者、課税対象、申告期限)

財産移譲のタイミングにおいて、生前贈与は被相続人が存命中に財産を移譲するのに対し、相続は被相続人の死亡後に財産が移譲されます。

納税義務者については、生前贈与では財産を受け取った「受贈者」が贈与税を申告・納税し、相続では財産を受け取った「相続人または受遺者」が相続税を申告・納税します。課される税金は、生前贈与では贈与税、相続では相続税です。

税金の申告・納税期限も異なります。生前贈与は贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までに行う必要があり、受贈者が期日までに申告・納税しない場合、税務署からの指摘や追及を受ける可能性があるため、注意が必要です。

一方、相続税は被相続人の死亡後10カ月以内が申告・納税期限と定められています。

贈与税は相続税に比べて税率が高いという一般的な認識がありますが、これは必ずしも当てはまりません。適切な優遇措置や非課税枠を組み合わせることで、贈与税の負担を抑え、結果的に相続税よりも有利に財産を移転できるケースもあります。

そのため、「贈与税は全て高い」という固定観念にとらわれず、個別の状況に応じて検討することが重要です。

贈与税と相続税の基本的な仕組み

贈与税の仕組みについて

贈与税は、1月1日から12月31日までの1年間に贈与により取得した財産の合計額から、基礎控除額(年間110万円)を控除した残額に対して課税されます。贈与税の税率は、贈与する金額が大きいほど高くなる累進課税が採用されています。

特に、贈与者と受贈者の関係性によって適用される税率が異なり、「直系尊属(父母や祖父母など)から18歳以上の子や孫への贈与」には「特例税率」が、それ以外の贈与(例えば兄弟間や夫婦間など)には「一般税率」が適用されます。

特例税率と一般税率の税率は10%から55%の間で定められており、同じ贈与額でも適用される税率によって税額が大きく変わる可能性があります。

相続税の仕組みについて

相続税は、被相続人の遺産総額から、相続税の基礎控除額(「3,000万円+600万円×法定相続人の数」)を差し引いた「課税遺産総額」に対して計算されます。遺産総額がこの基礎控除額を超えた場合に相続税が課税されます。

生前贈与と相続税の税制は、一見単純に見えても、その適用条件や税率、申告義務など多岐にわたる複雑性を持っています。

生前贈与の非課税枠と税務対策のポイント

生前贈与を相続税対策として効果的に活用するためには、国が定めている様々な非課税枠や特例を理解し、適切に利用することが不可欠です。

暦年贈与の基礎控除「110万円非課税」を最大限に活用する

暦年贈与の仕組みとメリット

暦年贈与とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間で贈与を受けた財産の合計額が110万円以下であれば、贈与税が課税されない制度です。この「110万円」は、財産を受け取る側(受贈者)1人あたりに適用される基礎控除額です。

この制度の大きなメリットは、贈与者が毎年110万円までであれば、何人に対しても非課税で贈与を行うことができる点です。例えば、親が子と孫それぞれに毎年110万円ずつ贈与した場合、年間合計220万円でも非課税となります。

これを長期間継続することで、多額の財産を非課税で次世代に承継することが可能です。暦年贈与の基礎控除額は、贈与する相手に特別な制約がないため、幅広い親族への贈与に活用できます。

年間110万円非課税の具体的な活用法について

節税対策として効果を最大化するには、受贈者1人あたりの年間合計額が110万円を超えないように計画的に贈与を行うことが重要です。

例えば、複数の贈与者(父母、祖父母など)から1人の受贈者が贈与を受ける場合、その受贈者が受け取った合計額が110万円を超えると贈与税が発生します。

具体的には、1人の子に父親、母親、祖父、祖母がそれぞれ110万円ずつ贈与した場合、子(受贈者)が受け取った合計額は440万円となり、基礎控除額110万円を超える330万円に対して贈与税がかかります。

これは、非課税枠が「受贈者ごと」に適用されるという原則を理解しておく必要があります。

【注意点】「連年贈与」と「名義預金」のリスクとその対策(贈与契約書の重要性)

毎年同じ贈与者から、同じ時期に同額の贈与を継続していると、税務署から「定期贈与」とみなされ、当初からまとまった金額を贈与する意図があったと判断されるリスクがあります。この場合、1回ごとの贈与ではなく、一連の贈与の合計額に対して贈与税が課税される可能性があります。

例えば、毎年110万円の贈与を10年間続ける計画であっても、税務署に「はじめから1,100万円を贈与する意図があった」と解釈され、1,100万円から基礎控除110万円を引いた990万円に贈与税がかかる可能性があります。これは税金逃れを防止するための措置です。

「連年贈与」自体は法律上問題ありませんが、「定期贈与」とみなされるかどうかがポイントです。定期贈与とは、一定期間にわたって一定額の給付を約束する契約を指します。この違いを明確に理解することが重要です。

また、「名義預金」とみなされるリスクにも注意が必要です。親が子や孫名義の預金口座に資金を振り込んでも、その子や孫が預金の存在を知らなかったり、自由に管理・使用できなかったりする場合、税務署から贈与が成立していない「名義預金」と判断されることがあります。この場合、その財産は贈与者の財産とみなされ、相続時に相続税の課税対象となります。

これらのリスクを回避し、贈与の事実を明確にするためには、毎年、贈与を行う都度「贈与契約書」を作成することが強く推奨されます。契約書に「今後〇年間にわたり」といった将来の贈与を約束する文言を入れることは、定期贈与と認定されるリスクを高めるため避けるべきです。

また、過去の日付で贈与契約書を作成することは文書偽装にあたり、税務調査で容易に見破られる可能性があります。

名義預金と判断される主なケースは、贈与者が預金の資金源だった場合、預金の管理者が贈与者だった場合、名義人や親権者が預金の存在を知らなかった場合、名義人や親権者が贈与を受けたと認識していなかった場合などです。贈与は、贈与者と受贈者の双方の合意と、受贈者の贈与を受ける意思があって初めて成立します。

相続時精算課税制度の活用と2024年税制改正のポイント

制度の概要と特別控除2,500万円

相続時精算課税制度は、父母や祖父母(贈与者)から子や孫(受贈者)への生前贈与を行う際に利用できる制度です。この制度を選択すると、累計で2,500万円までの贈与については贈与税が非課税となる「特別控除」が適用されます。この2,500万円を超えた部分については、一律20%の贈与税が課税されます。  

この制度の最大の特徴は、贈与者が亡くなり相続が発生した際に、この制度を利用して贈与した財産(特別控除額を超える部分を含む)を相続財産に加算し、相続税として一括で納税する点です。もし生前贈与時にすでに贈与税を支払っている場合は、その税額は相続税から控除され、二重課税を防ぐ仕組みになっています。

適用できるのは、贈与した年の1月1日時点で60歳以上の父母・祖父母(贈与者)から、18歳以上(2022年3月31日以前の贈与は20歳以上)の子・孫(受贈者)への贈与に限られます。一度この制度を選択すると、その贈与者からの贈与については、その後、暦年課税制度に戻ることはできません。

また、納税額がない場合でも、最初に贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの贈与税の申告期間内に「相続時精算課税選択届出書」などの必要書類を税務署に届け出る必要があります。

2024年改正により年間110万円の基礎控除新設とその影響がありました。令和6年1月1日以降の贈与から、相続時精算課税制度に大きな改正がありました。新たに年間110万円の基礎控除が新設され、この基礎控除は、従来の2,500万円の特別控除とは別に適用されることになりました。

この年間110万円の基礎控除内の贈与については、相続時精算課税制度を選択していても、相続財産に加算されない(持ち戻しの対象外となる)という点が重要です。これにより、年間110万円までの贈与であれば、確実に贈与税も相続税も非課税で財産を移転できる節税効果が得られるようになりました。

例えば、7年間毎年110万円を贈与すれば、最大770万円もの財産を確実に非課税で移転できます。

2024年の税制改正は、相続時精算課税制度の戦略的価値を根本的に変えました。改正前は「相続税の先送り」と認識されていたこの制度が、年間110万円の基礎控除新設により、暦年贈与と同様に「確実な非課税枠」を持つ強力な節税ツールとなりました。

これにより、贈与計画の柔軟性が増し、特に高齢者にとっては長期的な暦年贈与の持ち戻し期間の制約を受けずに、毎年確実に財産を移転できる新たな選択肢が生まれました。

暦年贈与との選択の判断基準について

相続時精算課税制度は、文字通り相続時に精算されるため、相続税がかかるような多額の財産を持つ方の場合、最終的にメリットがない場合もあります。

一度選択すると暦年課税制度には戻れないため、制度選択は慎重に行い、専門家への相談が強く推奨されます。2024年以降の税制改正により、相続時精算課税制度は以前よりも節税に利用しやすくなりましたが、制度を利用するためには届け出や手間が増えることもあります。

この制度は、住宅購入や起業など、子や孫が一時的にまとまった資金を必要とする場合に特に適しています。また、将来的に値上がりが予想される財産(不動産、自社株など)を贈与することで、贈与時の低い価格で相続財産に加算されるため、将来の相続税評価額の上昇を回避し、大きな節税効果が期待できます。

贈与者が高齢で、暦年贈与の持ち戻し期間(7年)を長生きできるか不安な場合にも、相続時精算課税制度の年間110万円の基礎控除を活用することで、確実に非課税贈与を行うことが可能になります。

不動産などの評価額が変動する資産の生前贈与においては、贈与時の評価額が相続税計算の基準となる相続時精算課税制度の特性を戦略的に活用することが重要です。

将来的な値上がりが予想される資産は、評価額が低い段階で贈与することで、相続時の税負担を効果的に軽減できる可能性があるため、長期的な視点での計画が求められます。

賃貸不動産を贈与することで、その後の家賃収入が受贈者のものとなり、贈与者の相続財産から外れるため、収益分だけ相続税を節税できる可能性もあります。生前に遺産承継を済ませることで、将来の遺産分割トラブルを予防する効果も期待できます。

その他の非課税特例を活用した生前贈与

相続税対策としての生前贈与には、暦年贈与や相続時精算課税制度以外にも、特定の目的や条件を満たす場合に利用できる様々な非課税特例が存在します。これらを活用することで、より大きな金額を非課税で贈与することが可能です。

① 夫婦間の居住用不動産贈与の特例(配偶者控除)について

婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産そのもの、または居住用不動産を取得するための資金を贈与する場合、基礎控除110万円とは別に最高2,000万円まで贈与税が非課税となる特例です。これにより、実質年間2,110万円まで非課税で贈与が可能となります。

この特例を適用するためには、婚姻期間が20年以上であること、贈与対象が居住用不動産またはその取得資金であること、そして受贈者が贈与を受けた年の翌年3月15日までにその住居に実際に住み始め、その後も住み続ける見込みであること、さらに贈与税の申告が必要であることなどの要件を満たす必要があります。

この特例は、自分の死後、配偶者が安心して住み続けられる環境を整えたい場合や、夫婦間の財産保有状況に偏りがあり、将来の相続財産となる自宅を配偶者と2人に分散させたい場合に特に有効です。

② 住宅取得等資金の贈与の特例について

父母や祖父母などの直系尊属から、子や孫が住宅の新築・取得または増改築等のための資金を贈与された場合に、一定額まで贈与税が非課税となる制度です。非課税限度額は、省エネ等住宅で1,000万円、それ以外の一般住宅で500万円(2022年1月1日以降の贈与に適用)です。

この特例は、贈与税の基礎控除110万円と併用することが可能です。適用期間は、令和6年度の税制改正により令和8年12月31日まで3年間延長されています。

受贈者は、贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上(2022年4月1日以降)であり、合計所得金額に一定の制限(原則2,000万円以下)があります。

特例を適用するためには、原則として居住開始前に贈与を受け、贈与を受けた翌年の3月15日までに新居に居住する必要があります。

③ 教育資金の一括贈与の特例について

父母・祖父母などの直系尊属が、30歳未満の子や孫へ教育資金を一括で贈与する場合、1,500万円まで贈与税が非課税となる制度です。このうち、塾や習い事など学校等以外に支払う費用は500万円までが非課税となります。

この制度を利用するには、金融機関で「教育資金管理口座」を開設し、資金を預け入れる必要があります。

受贈者が30歳になった時点で口座に残額がある場合、その残額に贈与税が課税されますが、学校等に在学中であるなどの一定の条件を満たせば、最長40歳まで契約を延長することが可能です。適用期限は、令和8年3月31日まで延長されています。

対象となる教育資金は、入学金、授業料、保育料などの「学校等に支払う費用」(1,500万円まで非課税)と、塾や習い事の月謝、教材費、制服代、給食費などの「学校等以外に支払う費用」(500万円まで非課税)に分けられます。

なお、必要な都度、学費を渡す場合は、生活費として贈与税がかからないため、この特例を使わなくても非課税にできる場合がある点も考慮すべきです。

④ 結婚・子育て資金の一括贈与の特例について

父母や祖父母などの直系尊属から、18歳以上50歳未満の子や孫に結婚・子育て資金を一括で贈与する場合、合計1,000万円まで贈与税が非課税となる制度です(このうち結婚資金は上限300万円)。

この制度を利用するためには、金融機関と「結婚・子育て資金管理契約」を結び、専用口座を開設する必要があります。適用期間は、平成27年4月1日から令和9年3月31日までの時限措置とされていますが、今後延長される可能性もあります。

対象となる費用は多岐にわたり、挙式費用、新居の家賃・敷金、引越代などの結婚費用、不妊治療費、出産費用、子の医療費、幼稚園・保育所などの保育費用(ベビーシッター代を含む)などが挙げられます。

資金を引き出す際には領収書の提出が求められます。また、制度適用中に贈与者が死亡した場合、専用口座の残額は相続税の課税対象となるため注意が必要です。

主な生前贈与の非課税特例一覧

特例名 非課税額(上限) 主な適用要件 有効なケース 適用期限(最新情報)
暦年贈与 年間110万円 受贈者1人あたり、贈与者不問 コツコツ少額贈与、贈与者が高齢でないケース 恒久
相続時精算課税制度 累計2,500万円+年間110万円(2024年~) 贈与者:60歳以上の父母・祖父母、受贈者:18歳以上の子・孫 高齢の贈与者、まとまった贈与、将来値上がりする財産 恒久
夫婦間の居住用不動産贈与 2,000万円 婚姻20年以上、居住用不動産等、居住要件 配偶者への自宅贈与、財産分散 恒久
住宅取得等資金贈与 省エネ等住宅:1,000万円、一般住宅:500万円 直系尊属から18歳以上の子・孫、合計所得制限、居住要件 子や孫の住宅購入・新築・増改築支援 令和8年12月31日
教育資金一括贈与 1,500万円(学校等以外は500万円) 直系尊属から30歳未満の子・孫、金融機関経由 子や孫の教育資金ニーズ、一括贈与 令和8年3月31日
結婚・子育て資金一括贈与 1,000万円(結婚資金は300万円) 直系尊属から18歳以上50歳未満の子・孫、金融機関経由、所得制限 子や孫の結婚・子育て資金ニーズ、一括贈与 令和9年3月31日

生前贈与の非課税特例は多岐にわたり、それぞれが異なる目的と要件を持ちます。

これらの特例は単独で利用するだけでなく、暦年贈与や他の特例と組み合わせることで、非課税枠を最大限に活用し、住宅購入、教育、結婚、子育てといった多様なライフイベントに対応した、より効果的かつ総合的な相続税対策を構築できます。

専門家と相談し、自身の状況に最適な組み合わせを見つけることが、節税効果を最大化する鍵となります。

生前贈与を成功させるための注意点と失敗事例から学ぶ教訓

生前贈与は強力な相続税対策となり得ますが、適切な知識と準備なしに進めると、思わぬ落とし穴にはまる可能性があります。過去の失敗事例から学び、注意点を押さえることが成功への鍵です。

贈与者の意思能力の重要性

生前贈与は、贈与者(財産を渡す人)と受贈者(財産を受け取る人)の「合意」があって初めて成立する法的な契約行為です。そのため、贈与者が病気などで判断能力を失っている状態(意識不明、重度の認知症など)では、有効な贈与を行うことはできません。

贈与者が判断能力を失ってから、子が将来の相続税を減らす目的で孫名義の口座へ送金した事例では、後日税務署から贈与が無効であると指摘され、その財産を相続財産に含めるよう求められるリスクがあります。

生前贈与による相続税対策は、贈与者が自身の意思を明確に表示できる健康なうちに行うことが不可欠です。

計画的な贈与の必要性(死期が迫った贈与のリスク)

贈与者の死亡前7年以内(2023年12月31日以前の贈与は3年以内)に、相続人に対して行われた暦年贈与は、原則として相続税の課税対象となる相続財産に加算されます(持ち戻し)。

このため、死期が迫った時期に相続人に対して生前贈与を行っても、結局相続税の課税対象となってしまい、相続税対策としての効果が得られない可能性があります。

生前贈与は、贈与者の健康状態に不安を覚えてから慌てて行うのではなく、できるだけ早い段階から計画的に行うことが重要です。

ただし、相続人ではない人(例えば、相続人の配偶者や子など)への生前贈与は、持ち戻しの対象外であるため、死期が迫った時期であっても検討の余地があります。

また、2024年1月1日以降の贈与では、相続時精算課税制度を選択すれば、相続人に対する贈与であっても年間110万円までは相続税の課税対象にはならないためこの制度の活用も検討すべきです。

遺留分への配慮

特定の相続人に偏った生前贈与を行うと、他の相続人の「遺留分」(法定相続人が最低限受け取れる相続財産の割合)を侵害する可能性があります。遺留分を侵害された相続人は、贈与を受けた人に対して遺留分侵害額請求を行うことができ、これが相続人間で新たな争いの原因となることがあります。

遺言書がないために、被相続人の意図しない人に財産が渡ってしまい、残された家族が後悔するという失敗事例も存在します。生前贈与を行う際には、遺留分を考慮した上で、遺言書と合わせて財産配分を明確にすることが、将来のトラブル回避につながります。

贈与契約書の作成と管理

贈与の事実を明確にし、税務署からの指摘(例えば「定期贈与」や「名義預金」とみなされること)を防ぐためには、贈与を行う都度「贈与契約書」を作成することが極めて重要です 。

毎年同じ時期に同じ金額の贈与を行う場合でも、契約書に「今後〇年分」といった将来の贈与を約束する文言を入れることは、「定期贈与」と認定されるリスクを高めるため避けるべきです。贈与契約書は、その都度作成し、贈与の時期や金額を柔軟に変更することも有効です。

また、過去の日付で贈与契約書を作成することは文書偽装にあたり、税務調査で容易に見破られるリスクがあります。親が勝手に子や孫名義の口座に送金する「名義預金」とみなされないよう、受贈者自身が贈与の事実を認識し、その財産を自由に管理・使用している実態が重要です。

生まれたばかりの赤ちゃんへの贈与も可能ですが、赤ちゃん名義の口座開設、振込記録の保持、親権者による贈与契約書の署名捺印など、贈与の証拠をしっかりと残すことが重要です。

専門家への相談の重要性

知識がないまま生前贈与を行うと、想定外の多額の税金が発生したり、期待した節税効果が得られなかったりするリスクがあります。曖昧な形で贈与を実行すると、後になって税務署に贈与が無効と判断され、追徴課税されるケースも少なくありません。

遺産の調査不足や、自身で相続税申告書を作成したことによる特例の見落としなど、専門家不在による失敗事例も存在します。相続税は非常に複雑な分野であり、適切な申告や対策のためには、専門家のサポートが不可欠です。

生前贈与は、単に税務上のメリットを追求するだけでなく、法的に有効な形で実行される必要があります。贈与者と受贈者の合意の有無、贈与者の意思能力、贈与契約書の適切な作成と管理といった法的要件を満たさなければ、税務署から贈与が無効と判断され、結果として相続税が課される可能性があります。

つまり、生前贈与は、法的に有効であることと、税務上の節税効果があることの両面から確認される必要があります。

どちらか一方が欠けても、意図した効果は得られません。このような多角的な視点からの検討は、専門家でなければ困難です。税金に関する相談は一般的に税理士に依頼することが多いですが、弁護士も税金面を含めた相続問題全般の相談に応じることが可能です。

特に、弁護士は税務だけでなく、遺産分割協議や遺留分侵害請求といった法的な紛争解決にも対応できる点が大きな強みです。

まとめと弁護士へのご相談

生前贈与は、単なる相続税対策に留まらず、将来の遺産分割トラブルの防止、認知症対策、特定の高額資産の効率的な移転といった多面的なメリットを持つ有効な手段です。

特に2024年の税制改正により、相続時精算課税制度の戦略的価値が高まり、贈与計画の柔軟性が向上しました。暦年贈与の持ち戻し期間延長は、贈与対象者の選定をより戦略的に行う必要性を示唆しています。

しかし、これらの制度は複雑であり、適切な知識と計画なしに進めると、意図しない税負担や法的トラブルを招くリスクがあります。贈与者の意思能力の確認、計画的な贈与の実行、遺留分への配慮、そして何よりも贈与契約書の適切な作成と管理は、生前贈与を成功させる上で不可欠な要素です。

相続税対策としての生前贈与は、税務と法律の両面から総合的に検討されるべき専門性の高い分野です。

弁護士法人かがりび綜合法律事務所は、大阪で相続問題、遺産分割に強い弁護士として、生前贈与を含む相続対策全般について専門的なアドバイスを提供しております。お客様一人ひとりの状況に合わせた最適なプランを提案し、将来の不安を解消できるようサポートいたします。

初回のご相談は無料です。相続に関するお悩みや生前贈与の計画について、どうぞお気軽にご相談ください。専門家が親身になってお話を伺い、最善の解決策をご提案いたします。

お客様の声・感謝の声

生前贈与で不安が解消!将来の家族も安心です(大阪市 40代 女性)
生前贈与で不安が解消!将来の家族も安心です
相続税のことが気になっていましたが、先生に生前贈与について詳しく教えていただき、長年の悩みが解消されました。
特に、将来的な認知症対策としても有効だと知り、早めに手を打てて本当に良かったです。家族みんなが安心して暮らせるよう、計画的に進めていけたことに感謝しています。
大阪市 40代 女性
複雑な税制も分かりやすく説明してくれて助かりました(堺市 60代 男性)
複雑な税制も分かりやすく説明してくれて助かりました
生前贈与と相続税の仕組みが複雑で、自分たちだけでは理解しきれませんでした。
かがりび綜合法律事務所の先生は、専門用語を使わずに、一つ一つ丁寧に説明してくださったので、疑問を解消しながら安心して手続きを進めることができました。特に、2024年の税制改正のポイントも踏まえてアドバイスいただけたのが心強かったです。
堺市 60代 男性
不動産の生前贈与で大きな節税効果を実感!(豊中市 50代 女性)
不動産の生前贈与で大きな節税効果を実感!
価値の高い不動産の生前贈与を検討していましたが、どのように進めれば良いか分からず困っていました。
先生に相談したところ、贈与時の評価額で相続財産に加算される相続時精算課税制度の活用を提案いただき、将来の相続税負担を大きく軽減できる見込みです。専門家のアドバイスの重要性を痛感しました。
豊中市 50代 女性
贈与契約書の大切さを教えていただき、リスクを回避できました(東大阪市 70代 男性)
贈与契約書の大切さを教えていただき、リスクを回避できました
毎年、子に少額の贈与をしていましたが、「連年贈与」や「名義預金」のリスクがあることを知り、不安に感じていました。かがりび綜合法律事務所の先生に、贈与契約書の作成の重要性や注意点を具体的に教えていただいたおかげで、税務上のリスクを回避することができ、大変感謝しております。
また、遺産分割についても、家族間の話し合いを円満に進めるためのアドバイスをいただき、無事に手続きを終えることができました。
東大阪市 70代 男性

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