任意後見制度を活用した生前対策

将来、ご自身の判断能力が低下した場合に備え、あらかじめご自身で信頼できる人に財産管理や生活支援をお願いする契約が「任意後見契約」です。ご自身の意思を反映できるため、法定後見制度よりも柔軟な対応が可能です。

当事務所は、お客様のご希望を詳細に伺い、公正証書による任意後見契約書の作成をサポートします。ご自身の老後の安心のため、任意後見制度に関心のある方はご相談ください。

老後の不安と「生前対策」の重要性

高齢化が急速に進む現代社会において、多くの方が「老後の生活」に対する漠然とした不安を抱えています。特に、自身の判断能力が低下した場合の財産管理や、医療・介護に関する意思決定について、どのように備えれば良いのかという悩みは尽きません。

これらの将来への懸念は、単なる経済的な問題に留まらず、精神的な平穏にも深く関わってきます。

具体的には、認知症などにより判断能力が低下すると、銀行口座が凍結されたり、不動産取引が困難になったりする「資産凍結」のリスクが生じます。これにより、ご自身の生活費や医療費の支払いが滞る可能性があり、生活の維持が困難になる事態も想定されます。

また、ご自身の希望に沿った医療・介護サービスを受けられないのではないか、あるいは施設入所の手続きが滞るのではないかといった懸念も多く聞かれます。

さらに、親族が財産を不適切に管理したり、ご本人の意思が不明確なために相続を巡って家族・親族間でトラブルが生じたりすることへの不安も、老後の大きな心配事の一つです。

このような将来への不安を解消し、ご自身の意思を尊重した「あなたらしい老後」を実現するために不可欠なのが「生前対策」です。

生前対策とは、ご自身が元気なうちに、将来の病気や判断能力の低下そして相続に備えて、財産管理や医療・介護、死後の事務などに関する希望を明確にし、必要な手続きを行う包括的な準備を指します。この準備は、ご自身の自己決定権を未来に繋ぎ、安心して生活を送るための積極的な予防策となります。

その中でも「任意後見制度」は、ご自身の判断能力が不十分になった場合に備え、あらかじめ「誰に」「どのような内容の支援を」依頼するかを契約で決めておくことで、将来の不安を解消し、ご自身の意思を尊重した「老後の安心」を確保するための中心的な制度です。

この制度は、単なる法的な手続きに留まらず、ご自身の人生の最終章を自らの手でデザインするための重要な手段として認識されています。

多くの人々が「将来、自分はどうなるのだろう」という漠然とした不安を抱える中で、任意後見制度は「自分で選んだ信頼できる人に、自分の意思に沿って任せられる」という具体的な解決策を提供し、心理的な平穏をもたらす役割を担います。

任意後見制度とは?

将来の安心を自分でデザインする

任意後見制度は、ご自身が元気で十分な判断能力があるうちに、将来、判断能力が不十分になった場合に備えて、あらかじめ「誰に」「どのような内容の支援を」依頼するかを公正証書による契約で決めておく制度です。この契約は必ず公正証書で作成され、本人の意思が明確に反映される点が最大の特徴であり、ご自身の「老後の安心」を自らデザインできる制度と言えます。

任意後見制度の法的定義と目的

任意後見とは

任意後見制度は、本人が十分な判断能力を有している時に、あらかじめ任意後見人となる方や将来その方に委任する事務の内容を公正証書による契約で定めておき、本人の判断能力が不十分になった後に、任意後見人が委任された事務を本人に代わって行う制度です。

その主な目的は、本人の判断能力低下に備え、財産管理や生活の支援をしてもらう「任意後見人」を事前に決めておくことで、本人の財産や生活を保護し、安心した老後を過ごせるようにすることにあります。

この制度は、ご自身の将来を他者に委ねるのではなく自らの意思でその内容を決定しコントロールすることを可能にします。

法定後見制度との違いと任意後見制度のメリット(自由度、本人の意思尊重)

任意後見制度を理解する上で、しばしば比較されるのが「法定後見制度」です。法定後見制度は、すでに判断能力が低下した人のために家庭裁判所が後見人を選任し、その権限も法律で定められる制度です。

これに対し、任意後見制度は本人が元気なうちに「将来的な備え」として自らの意思で契約を結び、後見人や支援内容を自由に決められる点が大きく異なります。この違いは、ご自身の自己決定権をどこまで尊重したいかという点で、制度選択の重要な分岐点となります。

任意後見制度の主要なメリットは以下の通りです。

① 後見人を自分で選べること

ご自身が最も信頼できる人物(家族、友人、弁護士や司法書士などの専門家)を任意後見人として指名できます。法定後見制度では家庭裁判所が後見人を選任するため、必ずしも希望する人物が選ばれるとは限りません。

ご自身で後見人を選ぶことで、ご自身の意思や利益が尊重された支援を受けられる可能性が高まります。

② 契約内容の自由度が高いこと

財産管理(預貯金、不動産、税金支払いなど)や身上監護(医療・介護サービス契約、施設入所手続きなど)に関する具体的な業務内容、任意後見人への報酬、報告方法などを、ご本人の希望に応じて細かく自由に決定し、契約書に盛り込むことができます。これにより、ご自身のライフスタイルや価値観を反映した、きめ細やかな支援が可能です。

例えば、「入院が必要になったら、〇〇銀行の定期預金を解約して賄ってほしい」「特定の病院に入院したい」といった具体的な希望も契約に含めることができます。

③ 本人の意思を最大限に尊重すること

公正証書で作成される契約内容に本人の希望が明確に盛り込まれるため、将来判断能力が低下しても、その意思が守られ、ご自身らしい生活を継続するための基盤となります。これは、ご自身の人生の選択権を未来に繋ぐことに他なりません。

任意後見制度と法定後見制度の比較表

項目 任意後見制度 法定後見制度
制度開始のタイミング 本人が十分な判断能力があるうち(将来への備え) 本人の判断能力がすでに低下している場合
後見人の選任者 本人が自由に選べる(公正証書で契約) 家庭裁判所が選任する(候補者を挙げられる場合も)
契約内容の自由度 高い(本人の希望を細かく反映できる) 低い(法律で定められた範囲)
家庭裁判所の関与 任意後見監督人による間接的な監督がある 家庭裁判所による直接的な監督がある
取消権 なし(本人が結んだ不利益な契約を取り消せない) あり(本人が結んだ不利益な契約を取り消せる)
目的 本人の意思に基づく将来の財産・生活の保護 判断能力が低下した本人の財産・生活の保護
費用 契約締結費用、任意後見監督人への報酬など 申立て費用、後見人への報酬など
死後事務 原則としてできない(別途契約が必要) 原則としてできない(別途契約が必要)

「判断能力」と任意後見制度

いつ、どのように備えるか

任意後見契約は、ご本人が「十分な判断能力」を有しているときにのみ締結可能です。この点が法定後見制度との最も大きな違いであり、「生前対策 判断能力」というキーワードが示す通り、生前対策としての任意後見制度の特性を理解する上で非常に重要です。

任意後見契約締結に必要な「判断能力」の基準

任意後見契約を締結する際には、ご自身で契約内容を理解し、その意思を表明できる「意思能力」が必要です。これは、契約の自由と自己決定権の原則に基づいています。

軽度の認知症と診断されている場合でも、その時点での意思能力が残っていれば、公証人が契約締結に必要な意思能力があると判断し、任意後見契約は可能です。

例えば、初期の認知症であれば、意思能力が残っているケースは少なくありません。

しかし、認知症が進行し、意思能力が完全に失われると、任意後見契約の締結はもはやできなくなります。この場合、法定後見制度しか選択肢が残されず、ご自身の意思を反映した後見人や支援内容を選ぶ自由が失われることになります。

契約の有効性を確保するため、公正証書を作成する公証人が本人の意思能力の有無を判断します。この判断の重要な材料の一つとして、医師の診断書が用いられます。したがって、将来への備えを考えるのであれば、判断能力が十分にある「今」こそ、任意後見契約の検討を始めるべき時期と言えます。

判断能力低下後の手続き

任意後見監督人選任の重要性

任意後見契約を公正証書で締結しただけでは、任意後見人がすぐにその職務を開始できるわけではありません。契約の効力が発生するのは、ご本人の判断能力が不十分になった後、家庭裁判所が「任意後見監督人」を選任した時点からです。

任意後見監督人の選任申立ては、ご本人、配偶者、四親等内の親族、または任意後見受任者が、ご本人の住所地を管轄する家庭裁判所に行います。この申立てには、任意後見契約書の写し、ご本人や受任者の戸籍謄本・住民票、財産目録、診断書など、多くの書類が必要となります。

家庭裁判所は、提出された書類や面接、調査の内容をもとに任意後見監督人を選任します。通常、監督人には弁護士や司法書士などの専門家が選ばれることが多く、家族や親族が選ばれることは原則としてありません。

任意後見監督人は、任意後見人が契約どおりに適切に職務を行っているか、不正や不適切な行為がないかを監視する役割を担います。これにより、任意後見人の職務の透明性が確保され、ご本人の財産と生活が保護される仕組みとなっています。

契約締結のタイミングと「見守り契約」の併用

任意後見制度は、将来に備えるための制度であるため、契約締結から実際に効力が発生するまでには、かなりの期間が経過する可能性があります。この期間中に、ご本人の判断能力の低下が徐々に進む中で、適切なタイミングで任意後見監督人選任の申立てができず、財産管理や契約に支障が生じるケースも考えられます。

また、任意後見受任者がご本人の判断能力の低下に気づかなかったり、ご本人が任意後見契約を締結したこと自体を忘れてしまったりすることもあり得ます。

このようなリスクを回避し、任意後見契約の効力発生まで継続的にご本人を支援するために、「見守り契約」の併用が推奨されます。見守り契約とは、任意後見契約の効力発生前から、受任者が定期的にご本人と面談したり、連絡を取ったりして、生活状況や健康状態を確認し、ご本人を見守る契約です。

これにより、ご本人の判断能力の変化を早期に察知し、適切なタイミングで任意後見監督人選任の申立てを行うことが可能になります。見守り契約は、ご本人が元気なうちから信頼できる専門家と繋がりを持つことで、将来への不安を軽減し、より確実な生前対策を実現するための重要な手段となります。

任意後見人ができること・できないこと

老後の生活を具体的に守る

任意後見人は、ご本人の判断能力が低下した際に、ご本人の意思を尊重し、その生活と財産を守るための重要な役割を担います。しかし、その権限には法律で明確に定められた範囲があり、できることとできないことがあります。

これを正確に理解することは、制度を適切に活用し、将来のトラブルを避ける上で不可欠です。

財産管理と身上監護の具体的な内容

任意後見人が担う役割は、大きく「財産管理」と「身上監護」の2つに分けられます。

財産管理

ご本人の資産や収入を適切に管理し、必要な支出や投資を行うことです。

  • 預貯金等の管理
    銀行口座の管理、定期的な収入(年金など)の受領、公共料金や税金、医療費、介護費などの支払い手続き。

  • 不動産や有価証券の管理
    不動産の維持管理、賃貸借契約、売却、有価証券の管理や運用。

  • 法律行為の代行
    遺産分割協議や賃貸借契約など、ご本人が行うべき法律行為の代行。

これらの財産管理を通じて、判断能力が低下した場合でも、無駄な資産減少や詐欺被害、不適切な契約を防ぎ、ご本人が安心して生活を続けるための経済的基盤が確保されます。

身上監護

ご本人の生活環境や健康管理、医療・介護サービスの利用に関する契約や手続きを代行することです。

  • 医療・介護サービスの契約
    医療機関への入院手続き、介護サービスの利用契約、施設入所の手続き。

  • 日常生活の支援サービス選定
    生活費の管理、日常的な買い物や家事のサポートに関するサービスの選定。

これらのサポートを通じて、ご本人の希望や生活スタイルを尊重しながら、安心して暮らせる環境を整えることが任意後見人の重要な役割です。

任意後見制度がもたらす「老後の安心」

具体的な事例と効果

任意後見制度は、単なる法的な手続きに留まらず、ご自身の将来に対する深い不安を解消し、真の「老後の安心」をもたらすための強力なツールです。ご自身の意思が尊重され、信頼できる人に将来を託せるという安心感は、何物にも代えがたい価値があります。

資産凍結の回避と財産保護

判断能力が低下すると、銀行口座からの預金の引き出しや不動産の売却・賃貸など、重要な財産に関する手続きができなくなる「資産凍結」のリスクが生じます。これは、ご自身の生活費や医療費の支払いに支障をきたし、生活そのものを脅かす可能性があります。

任意後見制度を事前に活用することで、ご本人の判断能力が低下した後も、任意後見人がご本人に代わってこれらの財産管理を適切に行うことができるため、資産凍結を回避し、ご自身の財産を確実に保護することが可能になります。

特に高齢者の場合、詐欺被害や不適切な契約を避けるためにも、信頼できる任意後見人による財産管理は大きな安心材料となります。

家族・親族間のトラブル防止

相続を巡る家族・親族間のトラブルは、しばしば深刻な事態に発展し、長年の関係を破壊することもあります。任意後見制度では、ご本人の意思が明確に契約に盛り込まれるため、ご本人の財産管理や生活に関する希望について、家族や親族間での誤解や争いを未然に防ぐことが期待できます。

また、任意後見人の事務が適正に行われているかについては、任意後見監督人がチェックする仕組みがあり、勝手な運用を防ぐことができます。これにより、財産管理の透明性が確保され、親族間の信頼関係を維持しつつ、後日の争いを未然に防ぐことにも繋がります。

本人の意思を尊重した生活の継続

任意後見制度の最大の特長は、ご本人の意思を最大限に尊重できる点にあります。ご自身が元気なうちに、どのような医療を受けたいか、どのような介護サービスを利用したいか、どの施設に入所したいか、あるいは住み慣れた自宅で最期まで過ごしたいかなど、具体的な希望を契約内容に盛り込むことができます。

これにより、判断能力が低下した後も、任意後見人がご本人の希望に沿った生活を支援し、ご自身らしい尊厳ある老後を継続することが可能になります。

弁護士に依頼するメリット

専門家による安心のサポート

任意後見制度はご自身の将来を託す重要な契約であり、その内容や手続きは複雑多岐にわたります。そのため、法律の専門家である弁護士に依頼することは、制度の適切な活用と将来の安心を確保する上で極めて有効な選択肢となります。

弁護士が任意後見人になるメリット

弁護士が任意後見人となることには、以下のような多くのメリットがあります。

① 契約行為を一任できること

弁護士は法律の専門家であり、ご本人の利益を最大限に守る義務を負っています。任意後見契約の作成から、ご本人の判断能力低下後の任意後見監督人選任申立て、そして実際の財産管理や身上監護に至るまで、一連の手続きを弁護士に一任することで、ご家族は仕事や介護に集中することができます。

家庭裁判所への申立て書類の作成など、専門知識が必要な手続きもスムーズに進めることが可能です。

② 法律関連のトラブルに対応できること

判断能力が低下すると、ご本人が詐欺被害に遭ったり、不当な契約を結んでしまったりするリスクが高まります。弁護士が任意後見人であれば、このような法律トラブルが発生した場合に、専門的な知識と経験に基づいて適切に対応し、ご本人の権利を守ることができます。

例えば、不必要な高額商品の購入契約を取り消す権利(法定後見人にはあるが任意後見人にはない取消権の限界を補完する意味合いで、交渉や訴訟を通じて対応)や、賃貸物件の家賃滞納問題など、複雑な紛争解決にも対応可能です。

③ 相続発生後も遺産分割協議などを相談できること

任意後見人の職務はご本人の死亡によって終了しますが、弁護士が任意後見人を務めていた場合、ご本人の家族関係や財産状況を既に把握しているため、その後の遺産分割協議など、相続に関する相談もスムーズに継続して行うことができます。

これにより、新たな弁護士を探す手間が省け、相続手続きも円滑に進むことが期待されます。

④ 親が遠方でも対応してもらえること

遠方に住む親族が任意後見人となることが難しい場合でも、ご本人の居住地に近い弁護士を任意後見人とすることで、きめ細やかなサポートを受けることができ、ご家族の安心に繋がります。

複雑な手続きの代行、法律トラブルへの対応、相続発生後の相談できる

弁護士に任意後見制度の利用を依頼する最大の利点は、その専門性と包括的なサポート能力にあります。任意後見契約の公正証書作成から、将来の任意後見監督人選任申立て、そして実際の財産管理や身上監護に至るまで、多岐にわたる複雑な手続きを代行してもらうことができます。これにより、ご本人やご家族の負担が大幅に軽減されます。

また、弁護士は法律の専門家として、任意後見業務を行う上で発生しうる様々な法律問題に対応できます。例えば、ご本人の財産を狙う悪質な業者との交渉や、親族間での意見の対立が生じた場合の調整など、法的知識と交渉力が必要とされる場面で、ご本人の利益を最大限に守るための支援を提供します。

さらに、任意後見人の職務が終了した後の相続手続きにおいても、弁護士は引き続きサポートを提供できます。ご本人の生前の財産状況や意思を把握している弁護士が、遺産分割協議の調整や、遺言執行者としての役割を担うことで、相続トラブルを未然に防ぎ、円滑な相続実現に貢献します。

⑥ 信頼性と透明性の確保

弁護士は、弁護士法に基づき、依頼者の利益を最大限に守る義務を負っており、財産管理においても厳格な規律のもと業務を行います。弁護士会による監督指導もあり、不正行為や不適当な行為を行う場合には懲戒処分が課されるため、その職務の信頼性は非常に高いと言えます。

また、多くの弁護士は弁護士賠償責任保険へ加入しており、これも信頼性を担保する要素となります。

任意後見監督人が選任された後も、任意後見人である弁護士は定期的に家庭裁判所へ報告する義務があり、任意後見監督人がその報告内容を審査します。

これにより、財産管理の透明性が確保され、ご家族も安心して弁護士に任せることができます。弁護士は中立的な第三者としての立場から、ご家族間の不和を防ぎ、適正な財産管理を遂行するため、親族間のトラブル防止にも寄与します。

任意後見制度の利用手続きと費用

スムーズな準備のために

任意後見制度を効果的に活用するためには、その利用手続きの流れと、それに伴う費用を事前に理解しておくことが重要です。適切な準備を行うことで、スムーズに制度を開始し、将来の安心を確保することができます。

契約締結から効力発生までの流れ

任意後見制度の利用は、主に以下のステップで進行します。

1. 任意後見受任者の決定と契約内容の話し合い

まず、ご本人が将来の任意後見人となる「任意後見受任者」を決定します。受任者は、ご家族や友人だけでなく、弁護士や司法書士などの専門家、あるいは法人もなることができます。

次に、ご本人と任意後見受任者の間で、財産管理や身上監護の具体的な内容、報酬の有無、報告方法など、任意後見契約に盛り込む内容を詳細に話し合います。

この段階で、将来起こりうる様々な事態を想定し、契約内容を具体的に定めることが重要です。

2. 任意後見契約の公正証書作成

話し合いで決まった内容を基に、公証役場で公正証書を作成します。

公正証書は、公証人が作成する公的な文書であり、高い証明力を持つため、後々のトラブルを防ぐ上で不可欠です。公証役場での手続きには、ご本人と任意後見受任者が同行し、公証人との事前打ち合わせを経て、契約書案が作成されます。

ご本人が病気などで公証役場に行けない場合は、公証人に自宅や病院に出張してもらうことも可能です。

3. 任意後見契約の登記

公正証書が作成されると、公証役場から東京法務局に任意後見契約の登記が申請されます。

登記が完了すると、「登記事項証明書」が発行され、任意後見契約の存在と内容が公的に証明されることになります。

4. 任意後見監督人選任の申立て

ご本人の判断能力が低下し、任意後見人の支援が必要になった段階で、任意後見受任者などがご本人の住所地を管轄する家庭裁判所に「任意後見監督人選任の申立て」を行います。

この申立てには、医師の診断書など、ご本人の判断能力が低下していることを示す書類が必要です。

5. 任意後見監督人の選任と業務開始

家庭裁判所は、申立てを受けて任意後見監督人を選任します。

任意後見監督人が選任されると、任意後見契約の効力が発生し、任意後見人が契約に定められた財産管理や身上監護の業務を開始します。

遺言書、家族信託、死後事務委任契約等の併用と選択肢

任意後見制度は、生前対策の強力な柱ですが、それだけで全ての将来の不安を解消できるわけではありません。ご自身の状況や希望に応じて、他の生前対策と併用することで、より包括的で安心な備えを築くことが可能です。

遺言書

ご自身の財産を、誰に、どのように引き継いで欲しいかという意思を明確にするための書面です。任意後見契約はご本人の生前の財産管理が目的であり、死亡によって終了するため、相続に関する意思表示は遺言書で行う必要があります。遺言書と任意後見契約は同時に作成することが推奨されます。

特に公正証書遺言は、家庭裁判所の検認手続きが不要で、遺言の内容や真偽に関するトラブルを未然に防ぐメリットがあります。

家族信託

財産管理を家族に託して資産凍結を防ぐことを主な目的とする制度です。任意後見制度が「判断能力が低下した人の財産や生活の保護」を目的とするのに対し、家族信託は「財産管理の柔軟性」に優れ、ご本人が元気なうちから財産管理を開始できる点が特徴です。

また、複数世代にわたる相続の指定も可能であり、遺言代用機能も備えています。ただし、家族信託では身上監護はできません。

財産管理等委任契約

判断能力が低下していないものの、体力の衰えや財産管理に不安がある場合に、ご本人が受任者に財産管理や身上監護の一部または全部を委任する契約です。

任意後見制度とセットで利用される「移行型」が一般的で、任意後見契約の効力発生までの期間をカバーすることができます。

死後事務委任契約

ご本人が亡くなった後の葬儀の手配、医療機関や介護施設の手続き、公共サービスの解約、遺品整理などの事務を、特定の人物に委任する契約です。

任意後見人の職務はご本人の死亡で終了するため、死後の手続きについても備えたい場合に別途締結します。

まとめ

かがりび綜合法律事務所がサポートする「あなたらしい老後」

高齢化社会の進展に伴い、ご自身の老後や将来の相続に対する不安は、多くの方にとって避けて通れない課題となっています。特に、判断能力の低下による財産管理の困難化や、ご自身の意思が尊重されない生活への懸念は、深刻な問題です。

このような時代において、「任意後見制度」は、ご自身が元気なうちに将来の安心を自らデザインし、ご自身の意思を未来に繋ぐための極めて有効な生前対策となります。

任意後見制度を活用することで、ご自身が信頼できる人物を後見人として選び、財産管理や医療・介護に関する具体的な希望を契約に盛り込むことが可能になります。これにより、将来判断能力が低下しても、資産凍結のリスクを回避し、ご自身の意思が尊重された「あなたらしい老後」を安心して送ることができます。

また、任意後見監督人による監督や、公正証書による契約締結は、財産管理の透明性を確保し、家族・親族間のトラブルを未然に防ぐ上でも大きな役割を果たします。

しかし、任意後見制度の利用には、公正証書作成や任意後見監督人選任申立てなど、専門的な知識と複雑な手続きが伴います。また、任意後見制度には取消権がないといった限界もあり、遺言書や家族信託、死後事務委任契約などの他の生前対策と組み合わせることで、より包括的で盤石な備えを築くことが重要です。

弁護士法人かがりび綜合法律事務所は、大阪で相続問題、遺産分割に強い弁護士として、任意後見制度をはじめとする生前対策全般に精通しております。

ご自身の将来に対する漠然とした不安を具体的な対策へと変え、ご家族の皆様が安心して生活できるよう、専門家として最適なサポートを提供いたします。複雑な手続きの代行はもちろんのこと、将来起こりうる法的トラブルへの対応、そして相続発生後の円滑な手続きまで、一貫して皆様を支えます。

ご自身の意思を尊重し、安心して豊かな老後を送るための最適なプランを、共に考え、実現してまいります。

お客様の声・感謝の声

将来の資産凍結の不安が解消され、心から安心できました(大阪市 70代 女性)
将来の資産凍結の不安が解消され、心から安心できました
高齢になり、もしもの時に銀行口座が凍結されてしまうのではないかと漠然とした不安を抱えていました。
先生に任意後見制度について相談したところ、私の財産がきちんと管理される仕組みや、詐欺被害から守られる可能性について詳しく教えていただき、心から安心できました。これで、生活費や医療費の心配をすることなく、穏やかな老後を過ごせます。
大阪市 70代 女性
親族間のトラブルを未然に防ぐことができ、感謝しかありません(堺市 60代 男性)
親族間のトラブルを未然に防ぐことができ、感謝しかありません
私たちの家族は人数が多く、もし将来、私の判断能力が低下した際に、財産管理を巡って親族間で揉め事になるのではないかと懸念していました。
弁護士の先生を任意後見人に選任することで、中立的な立場で財産管理を行ってもらえるだけでなく、任意後見監督人によるチェックもあるため、透明性が確保され、親族間の信頼関係が守られると感じました。本当にありがとうございました。
堺市 60代 男性
私の願いを尊重した老後を送れるよう、きめ細やかなサポートに感動しました(豊中市 80代 女性)
私の願いを尊重した老後を送れるよう、きめ細やかなサポートに感動しました
住み慣れた自宅で最期まで暮らしたいという私の長年の願いがありました。任意後見契約の際に、その希望を具体的に盛り込むことができ、判断能力が低下した後も、先生が私の意思を尊重して生活をサポートしてくれることに大きな喜びを感じています。
単なる法律手続きではなく、私の「あなたらしい老後」を実現するためのきめ細やかなサポートに感動しました。
豊中市 80代 女性
複雑な手続きも全てお任せでき、とても心強かったです(東大阪市 50代 男性)
複雑な手続きも全てお任せでき、とても心強かったです
親の任意後見制度の利用を検討していましたが、公正証書の作成や家庭裁判所への申立てなど、手続きが非常に複雑で、自分たちだけでは手に負えないと感じていました。
弁護士の先生に依頼したところ、全ての複雑な手続きを代行していただけただけでなく、将来発生しうる法的なトラブルへの対応や、万が一の相続発生時の相談まで一貫してサポートいただけるとのことで、大変心強かったです。安心して任せられる専門家がいることの重要性を痛感しました。
東大阪市 50代 男性

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