弁護士野条健人の相続ブログ|「公正証書遺言」が最強の理由とは?トラブルを回避する3つのメリット
こんにちは。弁護士の野条健人です。 今回のブログでは、相続トラブルを未然に防ぐために、私が最もお勧めしている**「公正証書遺言」**について、そのメリットをわかりやすくお話ししたいと思います。
「遺言書」と聞くと、自分で書く「自筆証書遺言」をイメージされる方が多いかもしれません。しかし、私がこれまで多くの相続案件に携わってきた経験から、「公正証書遺言」こそが、ご家族を守る最強のツールだと断言します。
では、なぜ公正証書遺言がそれほど強力なのでしょうか。その理由を3つのメリットに分けてご説明します。
メリット1:法律の専門家が作成するから「無効」にならない
自筆証書遺言は、ご自身で気軽に作成できる一方で、書き方を少しでも間違えると、法的に無効になってしまうリスクがあります。
例えば、日付の記載がなかったり、署名がなかったり、財産の内容が曖昧だったりすると、せっかく書いた遺言書が無効と判断されてしまうのです。 そうなると、ご本人の意思は反映されず、結局は相続人全員で遺産分割協議をしなければなりません。
一方、公正証書遺言は、公証役場の公証人が、法律の専門家として、ご本人の意思を正確に聞き取り、法的に有効な文章を作成します。 そのため、「書き方が間違っていて無効になる」という心配がありません。 ご自身の想いを、確実に実現させることができるのです。
解決事例:自筆証書遺言の「無効」が招いたトラブル
ご主人が亡くなり、自筆で書かれた遺言書が見つかりました。 「すべての財産は、妻に相続させる」 と書かれていましたが、日付の記載がなく、遺言書は無効と判断されました。
その結果、ご主人のご兄弟が「私たちにも遺留分があるはずだ」と主張し、遺産分割協議は泥沼化してしまいました。 もし、ご主人が公正証書遺言を作成していれば、ご自身の意思は確実に尊重され、奥様もご兄弟も、このような辛い思いをすることはなかったでしょう。
メリット2:家庭裁判所の「検認」手続きが不要だからスムーズ
自筆証書遺言は、見つかった後、家庭裁判所で「検認」という手続きをしなければなりません。 この手続きは、遺言書を偽造・変造から守るために行うもので、相続人全員に通知が送られ、全員が立ち会う必要があります。
しかし、この手続きには、約1~2ヶ月程度の時間がかかり、手間も費用もかかります。 また、遠方に住んでいる相続人がいる場合、手続きがさらに複雑になることもあります。
一方、公正証書遺言は、公証人が作成した時点ですでに法的に有効なものとして認められているため、この検認手続きが不要です。 相続開始後、すぐに遺言書の内容に従って手続きを進めることができるので、ご家族の負担を大きく減らし、スムーズに相続を完了させることができます。
解決事例:検認手続きの煩雑さに困惑したケース
ご両親が亡くなり、遺品の中から自筆の遺言書が見つかりました。 ご兄弟は、早く相続手続きを済ませて、前に進みたいと思っていましたが、検認手続きが必要だと知り、その煩雑さに困惑しました。
兄は仕事が忙しく、妹は海外に住んでいたため、日程調整が難航しました。 その結果、手続きがなかなか進まず、ご兄弟の間で「なぜこんなに時間がかかるんだ」と不満が募り、関係がギクシャクしてしまいました。
公正証書遺言であれば、このような手続きの手間や時間がかからず、ご家族の精神的な負担も軽減できます。
メリット3:原本が公証役場で保管されるから「紛失」の心配がない
自筆証書遺言は、自宅で保管するため、紛失したり、火災などで焼失したりするリスクがあります。 また、特定の相続人が遺言書を隠したり、破棄したりする可能性もゼロではありません。
しかし、公正証書遺言は、原本が公証役場に厳重に保管されます。 そのため、紛失や偽造、破棄のリスクがありません。 ご家族に遺言書の存在を知らせておけば、万が一、見つからない場合でも、公証役場で探してもらうことができるのです。
これは、ご本人の意思が確実に守られるだけでなく、相続人全員にとっての安心材料にもなります。
まとめ
公正証書遺言は、作成に手間と費用がかかりますが、それ以上の大きなメリットがあります。 ご自身の想いを確実に実現し、何よりも**「残されたご家族が争うことなく、円満に相続を終えられる」**という安心感を得ることができます。
「遺言書はまだ早い」「自筆で書けば十分だろう」 そう思っている方もいらっしゃるかもしれません。 しかし、いざという時にご家族が困らないように、また、ご自身の最後の想いを確実に伝えるためにも、公正証書遺言の作成をぜひご検討ください。
当事務所では、ご依頼者様の想いを丁寧にヒアリングし、公証人との手続きをサポートするなど、公正証書遺言の作成を全面的にお手伝いしています。 「何から始めればいいかわからない」という方も、まずはお気軽にご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
弁護士法人かがりび綜合法律事務所 弁護士 野条 健人