「遺留分侵害額請求」は、亡くなった方の遺言によって不公平な遺産分割が行われた場合に、最低限もらえるはずの遺産(遺留分)を取り戻すための手続きです。
この記事では、遺留分侵害額請求の基礎知識から、具体的な手続き、請求方法までをわかりやすく解説します。
このページの目次
遺留分侵害額請求で「取り戻す」あなたの権利
相続は、故人の意思を尊重しつつ、残された家族が新たな生活を始めるための大切な節目です。しかし、遺言書の内容や生前の贈与が、特定の相続人に極端に有利なものであった場合、法律で保障された最低限の権利である「遺留分」が侵害されることがあります。
このような不公平な状況に直面した際に、自身の権利を「取り戻す」ための法的な制度が「遺留分侵害額請求」です。この制度は、遺族の生活保障と相続人間の公平性を図ることを目的として民法に定められています。
本記事では、遺留分侵害額請求の基本的な知識から、具体的な請求方法、手続きの流れ、そして注意すべき時効期間まで、その全容をわかりやすく解説します。ご自身の権利を守り、適正な相続を実現するための一助となるよう、ぜひ最後までお読みください。
遺留分とは?基礎知識をわかりやすく解説
遺留分とは、民法によって兄弟姉妹以外の法定相続人(配偶者、子、直系尊属)に保障された、最低限の遺産取得割合を指します。被相続人が遺言書で全財産を特定の個人や団体に遺贈したり、生前に多額の財産を贈与していたりしても、この遺留分を侵害することは法的に許されません。
遺留分制度の主な目的は、遺言者の財産処分権を無制限に認めるのではなく残された遺族の生活を保障し、長年の貢献を考慮することで相続人間の公平性を確保することにあります。
これにより、特定の相続人が不当に排除されたり、生活に困窮したりする事態を防ぎ、家族間の調和を保つ役割を果たしています。
遺留分を請求できる「遺留分権利者」は、以下の法定相続人に限定されます。
- 配偶者
- 子、孫などの直系卑属(代襲相続人、再代襲相続人を含む)
- 親、祖父母などの直系尊属
一方で、法定相続人であっても、兄弟姉妹や甥姪には遺留分が認められていません。また、相続欠格者(相続人としての資格を失った者)、相続廃除された人(被相続人によって相続権を剥奪された者)、そして自ら相続放棄をした人も、遺留分を請求する権利を失います。
遺留分権利者の範囲は、一見すると明確に見えますが、代襲相続や再代襲相続、あるいは相続欠格や廃除といった特殊な事情が絡むと、誰が実際に遺留分を請求できるのかという判断自体が複雑になることがあります。
遺留分侵害額請求の最初の段階で、相続人の正確な確定を誤ると、その後の遺留分計算や請求手続き全体が無効となるリスクを伴います。このため、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本を収集し、相続人を正確に調査・確定する作業は、専門的な知識と細心の注意を要します。
この初期段階での正確な対応が、その後の紛争解決の成否を大きく左右するため、弁護士による専門的なサポートが早期解決の鍵となります。
なお、遺留分は、相続開始前に家庭裁判所の許可を得て放棄することも可能です。相続開始後であれば、特に手続きなく自由に放棄することができます。
ただし、生前の遺留分放棄が認められるには、放棄が自由意思に基づくこと、放棄の理由に合理性・必要性があること、そして遺留分の代わりとなる資金援助などがあることといった厳格な要件を満たす必要があります。
遺留分は「総体的遺留分」と「個別的遺留分」の二段階で計算されます。
総体的遺留分について説明します。相続人全体に保障される遺留分の割合は、原則として相続財産の2分の1です。ただし、相続人が直系尊属(親や祖父母)のみの場合は、相続財産の3分の1となります。
個別的遺留分について説明します。各相続人の具体的な遺留分は、この総体的遺留分に、その相続人の「法定相続分」を掛けて算出されます。
計算例
例えば、被相続人に配偶者と子2人が相続人として存在する場合、相続人全体の総体的遺留分は2分の1です。この場合、配偶者の法定相続分は2分の1、子1人あたりの法定相続分は4分の1となります。
- 配偶者の遺留分: 1/2(総体的遺留分) × 1/2(配偶者の法定相続分) = 1/4
- 子1人あたりの遺留分: 1/2(総体的遺留分) × 1/2(子の法定相続分) ÷ 2(子の人数) = 1/8
遺留分の計算は相続人の構成によって割合が細かく変動し、特に不動産や非上場株式などの財産評価が絡むとその算定は複雑を極めます。財産の評価方法(時価、地価公示価格、相続税評価額など)によって金額が大きく異なり、これが当事者間での意見対立や交渉の難航を招く主要な原因となります。
この計算の複雑性は、相続トラブルの長期化や感情的な対立を引き起こすことが少なくありません。
正確な遺留分額の算定は、交渉や訴訟の成否を分ける最も重要な要素であり、弁護士は正確な法律知識と財産評価のノウハウを用いて、依頼者の適正な遺留分を算定し、相手方との交渉を有利に進めることができます。
この専門性が、依頼者が「取り戻す」金額に直結するため、弁護士に依頼する大きなメリットとなります。
遺留分侵害額請求と「遺留分減殺請求」の違い
遺留分制度は、2019年7月1日に施行された民法改正によって大きく変更されました。
それ以前は「遺留分減殺請求」という制度でしたが、現在は「遺留分侵害額請求」に名称が変わり、制度内容も刷新されています。
項目 | 遺留分減殺請求(旧民法) | 遺留分侵害額請求(改正民法) |
適用時期 | 2019年6月30日までに開始した相続に適用 | 2019年7月1日以降に開始した相続に適用 |
請求対象 | 遺産の「現物」が返還されるのが原則 | 侵害額に相当する「金銭」の支払いを請求する |
生前贈与の考慮期間 | 贈与の時期に制限なし | 原則として相続開始前10年以内に行われた相続人への贈与が対象。ただし、遺留分侵害を知りながら行われた贈与は期間制限なし |
改正理由 | 現物返還による共有状態が生じ、その後の管理・処分を巡る「共有物分割訴訟」などの二次的紛争が多発したため | 金銭請求に一本化することで、共有によるトラブルを回避し、より迅速かつ円満な解決を図るため |
民法改正の最大の意義は、旧制度である遺留分減殺請求が抱えていた「共有物分割訴訟」という二次的な紛争リスクを解消した点にあります。
以前は、不動産などの現物が返還されることで、請求者と被請求者との間でその財産を「共有」する状態が生じ、感情的な対立が深まっている当事者間では、その後の管理や処分に関する合意形成が極めて困難でした。これにより、別の裁判に発展することも少なくありませんでした。
これに対し、新制度である遺留分侵害額請求では、侵害された遺留分を「金銭」で支払うことに一本化されました。不動産が不公平に贈与されていたケースであっても、その価値に応じた金銭を支払うことで解決できるようになったのです。
これにより、現物共有による複雑な管理や処分に関する合意形成の困難さがなくなり、より迅速かつ円満な解決が期待できるようになりました。
この金銭請求への一本化は、依頼者にとって「遺留分を取り戻す」プロセスが格段にシンプルになり、精神的・時間的負担が軽減されることを意味します。弁護士は、金銭での解決を前提とした交渉や訴訟戦略を立てやすくなり、依頼者の最終的な満足度を高めることに貢献できます。
また、生前贈与の対象期間についても変更がありました。旧制度ではいつ行われた生前贈与であっても遺留分額の計算対象とされましたが、新制度では原則として相続開始前10年以内に行われた相続人への贈与に限定されています。
ただし、贈与者と受贈者の双方が遺留分を侵害することを知りながら行われた贈与については、期間の制限なくすべて遺留分侵害額請求の対象となります。
2019年7月1日という施行日は、どの制度が適用されるかを決定する重要な分岐点です。相続開始日がこの日付の前か後かで、請求の対象(現物か金銭か)や生前贈与の考慮期間が変わるため、依頼者は自身のケースにどちらが適用されるか正確に把握する必要があります。
弁護士は、まず相続開始日を確認し、適切な法的枠組みを適用する責任があります。これにより、依頼者が不正確な情報に基づいて行動し、権利を失うリスクを防ぎます。
特に、旧制度が適用されるケースでは、現物返還に伴う共有問題の解決策(例:代償金請求など)も視野に入れた戦略が必要となり、弁護士の専門知識が不可欠です。
遺留分侵害額はどのように計算する?
遺留分侵害額を正確に算定することは、遺留分侵害額請求手続きにおいて最も重要なステップの一つです。
遺留分侵害額は、遺留分額から、遺留分権利者が遺贈や特別受益によって得た財産額を差し引き、遺留分権利者が承継した債務の額を加算することで算出されます。
遺留分算定の基礎となる財産額の計算方法
遺留分算定の基礎となる財産額は、以下の基本計算式で算出されます。
遺留分算定の基礎となる財産額 =
「被相続人が相続開始時に有した財産の価額」+「贈与した財産の価額」-「債務の全額」
- 積極財産
相続開始時に被相続人が所有していた預貯金、不動産、有価証券などのプラスの財産を指します。これらの財産は、客観的な評価額に基づいて算定されます。 - 相続債務
被相続人が残した借金や未払金などのマイナスの財産は、遺留分算定の基礎となる財産額から控除されます。
生前贈与・遺贈の考慮
遺贈・死因贈与
遺言による遺贈や、死亡を原因として効力が発生する死因贈与は、遺留分侵害額請求の対象となります。
生前贈与
生前贈与の取り扱いは複雑です。
原則として、相続開始前1年以内に行われた相続人以外への贈与が対象となります。
相続人への贈与(特別受益とみなされるもの)は、相続開始前10年以内に行われたものが対象となります。
しかし、贈与者と受贈者の双方が遺留分を侵害することを知りながら行われた贈与については、期間の制限なくすべて遺留分侵害額請求の対象となります。
ただし、中小企業の株式や事業用財産を後継者に贈与する場合など、例外的に遺留分侵害額請求の対象とならない贈与も存在します。
生命保険金
生命保険金は原則として遺留分算定の基礎財産には含まれませんが、その金額が非常に大きく、他の相続人の取得分との間に著しい不公平が生じると認められる場合には、「特別受益」とみなされ、遺留分の計算対象に含まれることがあります。
遺留分侵害額を正確に計算するには、遺産の評価が不可欠ですが、特に不動産や非上場株式などの評価は専門的な知識を要し、評価方法(時価、地価公示価格、相続税評価額など)によって金額が大きく変動します。この評価額の相違が、当事者間の交渉を難航させる主要な原因となります。
弁護士は、不動産鑑定士や税理士などの専門家と連携し、客観的で適切な財産評価を行うことで、交渉を有利に進め、依頼者の適正な遺留分を確保することができます。また、遺産がほとんどない場合でも、生前贈与の内容によっては遺留分侵害額請求が可能であるため、徹底した財産調査が重要です。
生前贈与が遺留分計算の対象となる期間(1年、10年、無期限)は、贈与の時期や受贈者の属性、贈与の意図によって細かく規定されています。特に「遺留分を侵害することを知りながら行われた贈与」の判断は、贈与者と受贈者の内心の意思に関わるため、立証が非常に困難です。
この複雑性は、生前贈与が関わる遺留分侵害額請求事件において、紛争の長期化や立証の困難さを招く大きな要因となります。弁護士は、過去の判例や具体的な証拠(贈与契約書、通帳履歴など)を精査し、贈与の法的性質と遺留分への影響を正確に判断することで、依頼者の権利を最大限に保護します。
遺留分侵害額請求の「請求方法」と手続きの流れ
遺留分侵害額請求は、感情的な対立を伴うことが多く、法的な知識がなければ円滑な解決は困難です。
一般的には、以下の手順で手続きを進めます。
遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者が権利を行使する意思表示をして初めて、遺留分を侵害している相手方(受遺者や受贈者など)に対する金銭債権として発生します。この意思表示は口頭でも可能ですが、「言った言わない」の水掛け論を防ぎ、後々のトラブルを回避するためには、客観的な証拠が残る方法で行うことが極めて重要です。
そのため、郵便局が内容と送付日、受取人を証明する「内容証明郵便(配達証明付き)」で請求書を送付することが強く推奨されます。
請求書には、遺留分侵害額請求をする旨を明確に記載し、請求金額(確定していなくても「遺留分侵害額請求権を行使します。遺留分侵害額はおって計算します。」のように記載しても可)を提示することが望ましいです。
また、被相続人の氏名、相続開始日、遺言の内容や生前贈与の事実など、遺留分が侵害されている具体的な事実を記載します。送付先は、遺留分を侵害している相手方となります。民法上、請求相手の範囲や順序にはルールがあるため、誤りのない特定が重要です。
内容証明郵便は単なる意思表示の手段ではなく、法的な証拠能力を持つ重要なステップです。これにより、遺留分侵害額請求権の時効の進行を確実に止める効果があり。後の調停や訴訟において請求の意思表示があったことを明確に証明できます。
弁護士は、内容証明郵便の作成から送付までを適切に行うことで、依頼者の権利を確実に保全し、後の紛争解決プロセスを円滑に進めるための基盤を築きます。これは、依頼者が「取り戻す」権利を確実に実行するための、最初の、そして最も重要なステップです。
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内容証明郵便を送付した後、まずは裁判外での話し合い(示談交渉)を試みるのが一般的です。この段階で合意に至れば、裁判所を介さずに柔軟かつ短期間で解決できる可能性があります。
しかし、相続問題は感情的な側面が強く、特に金銭が絡む遺留分の話し合いは、親族間であっても感情的な対立が生じやすいものです。財産評価で意見が対立したり、遺言書の有効性や解釈に争いがあったり、あるいは相手方が話し合いに応じない、無視する、高圧的な態度を取るといったケースも珍しくありません。
このような状況では、当事者同士での解決は極めて困難となり、無駄な時間と労力が費やされるだけでなく、遺留分侵害額請求権の時効が進行するリスクも高まります。
遺留分侵害額請求における交渉は、単に金額の合意だけでなく、感情的な側面が強く影響します。弁護士は、法律の専門家として冷静かつ論理的に交渉を進めることができます。相手方からの不当な主張に対して適切に反論し、依頼者の利益を最大限に守るための戦略を立てます。
弁護士が代理することで、感情的な対立を避け、建設的な話し合いに移行させ、早期解決の可能性を高めることができます。話し合いで合意に至った場合は、後々のトラブルを防ぐために、必ず合意書を作成し、公正証書にすることをお勧めします。
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当事者間の交渉で解決しない場合、原則として訴訟の前に家庭裁判所に調停を申し立てる必要があります。これは「調停前置主義」と呼ばれる原則です。
調停の申し立ては、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に行います(当事者間の合意があれば他の家庭裁判所も可)。申立書には「申立の趣旨」「申立の理由」「当事者の住所氏名」のほか、被相続人の戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、遺言書、遺産の内容を確認できる資料(不動産登記事項証明書、預貯金通帳の写しなど)などを添付します。
書類が受理されると、裁判所が調停期日に当事者を呼び出します。調停期日では、調停委員という第三者が間に入り、双方の意見を聞きながら解決の糸口を探ります。
調停は裁判所が関与するものの、あくまで「話し合い」の場であり、強制的な結論が出されるわけではありません。調停委員は中立的な立場から助言を行いますが、当事者双方が合意に至らなければ調停は不成立となります。
この段階で、相手方が非協力的な場合や、財産評価などで大きな隔たりがある場合は、調停の長期化や不成立のリスクが高まります。
弁護士は、調停の段階で相手方の真意や主張を正確に把握し、調停委員を介して依頼者の主張を効果的に伝えることができます。また、調停の進行状況を見極め、早期に訴訟への移行を判断するなど、依頼者の時間的・精神的負担を最小限に抑えるための戦略的なアドバイスを提供します。
なお、家庭裁判所に調停を申し立てるだけでは、遺留分侵害額請求権を行使したことにはならないため、別途、内容証明郵便による意思表示が必要である点に注意が必要です。
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調停でも話し合いがまとまらない場合、最終的には地方裁判所(または簡易裁判所)で訴訟を提起することになります。
訴訟手続きは、原告(遺留分権利者)が訴状を提出することから始まります。その後、被告(受遺者や受贈者)が答弁書や反論資料を提出し、双方の主張と反論が書面でやり取りされることで争点が明確化されます。
遺留分の計算には多数の資料が必要であるため、不動産評価に関する資料のほか、預貯金通帳や取引明細などが証拠として提出されます。必要に応じて証人尋問も行われ、事実関係が立証されます。
訴訟中も裁判所は折に触れて和解を勧めることがありますが、合意に至らない場合は最終的に判決が言い渡されます。
遺留分侵害額請求訴訟は、複雑な法律問題を含み、適切な主張や証拠提出がなければ請求が認められない可能性があります。訴状や準備書面の作成、証拠収集、裁判期日への出頭など、極めて専門的かつ時間と労力を要する手続きを個人で行うことは非常に困難です。
長期にわたる精神的・時間的負担は計り知れませんし相手方が弁護士を立ててきた場合、法的な議論を対等に行うことは一般の方には事実上不可能に近いでしょう。
弁護士は、これらの複雑な手続きを依頼者に代わって行い、法的に最適な戦略を立てることで、依頼者の精神的負担を大幅に軽減します。裁判の長期化によるストレスや、専門的な知識不足による不利な状況を回避し、依頼者の権利を確実に「取り戻す」ための強力なサポートを提供します。
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最終的に「支払いをせよ」という判決が確定したにもかかわらず、被告が支払いを拒否した場合、遺留分権利者は強制執行を申し立てることで、相手方の財産を差し押さえ、遺留分を回収することができます。
預貯金、不動産、株式などが差し押さえの対象となり、競売にかけられたり、直接回収されたりして、その売却代金や金銭が遺留分権利者に配当される流れです。
裁判で勝訴判決を得ても、相手方が任意に支払わない限り、実際に金銭を回収するためには強制執行という別の法的手続きが必要です。この手続きもまた専門的な知識と経験を要し、相手方の財産を特定する調査なども含まれます。
弁護士は、単に裁判で勝つだけでなく、依頼者が実際に遺留分を「回収」するまでの一連のプロセスを一貫してサポートします。これにより、依頼者は法的手続きの最終段階まで安心して任せることができ、確実な権利実現へと導かれます。
遺留分侵害が起きる主なケース
遺留分が侵害される状況は多岐にわたりますが、典型的なケースとしては以下のものが挙げられます。
- 不公平な遺言書があるケース
被相続人が特定の相続人(例えば長男のみ)や第三者(例えば愛人、特定の団体など)に財産の大半を遺贈する内容の遺言書を残し、他の相続人の遺留分が侵害される場合です。遺言書に「遺留分を認めない」といった記載があったとしても、遺留分権利者は法律に基づき遺留分を請求できます。 - 多額の生前贈与があったケース
被相続人が生前に特定の相続人や第三者に多額の財産を贈与した結果、相続開始時の遺産が著しく減少し、他の相続人の遺留分が侵害される場合です。 - 死因贈与があったケース
被相続人の死亡を原因として効力が発生する贈与契約(死因贈与)によって、特定の者に過大な財産が贈与され、遺留分が侵害される場合も含まれます。 - 特定の財産に集中しているケース
被相続人の財産が、事業用財産や特定の不動産など、分割が難しい特定の財産に集中しており、公平な分配が困難な場合に遺留分侵害が発生することがあります。
遺留分侵害額請求は自分でできる?弁護士に依頼するメリット
遺留分侵害額請求は、法的な知識と手続きの経験があれば、ご自身で進めることも不可能ではありません。しかし、実際には多くの困難とリスクが伴います。
自分で手続きを進めることの難しさ・リスク
遺留分侵害額請求は、民法の条文や判例、財産の正確な評価、特別受益の持ち戻しなど、専門的な法律知識を要し、複雑な計算が必要です。
内容証明郵便の作成・送付、家庭裁判所での調停、地方裁判所での訴訟など、各段階で専門的かつ複雑な手続きが求められます。
内容証明郵便には書式や字数制限があり、添付書類の準備も多岐にわたるため、不備があれば受理されない可能性もあります。
相続問題は、親族間の感情的な側面が強く影響し、冷静な話し合いが困難になることが頻繁にあります。相手方が話し合いに応じない、あるいは高圧的な態度を取ることもあり、自分だけでは解決が難しいケースが多々あります。
遺留分侵害額請求には1年という非常に短い時効期間が定められているため、手続きに手間取っている間に権利を失うリスクがあります。
遺留分侵害の事実や侵害額を証拠に基づいて証明する責任は、請求する側にあります。必要な証拠を収集し、法的に有効な形で立証活動を行うには、専門知識と経験が不可欠です。
弁護士に依頼するメリット
遺留分侵害額請求は、単に法律に則って書類を提出する「手続き」ではなく、複雑な人間関係、感情、そして財産評価が絡む「問題」です。自分で対応しようとすると、法的知識不足、感情的な対立、時効リスク、そして精神的負担という多重の壁に直面します。
弁護士に依頼することで、これらの困難を乗り越え、より確実かつ円滑な解決を目指すことができます。
複雑な法律用語や手続きについて適切に説明を受け、安心して手続きを進めることができます。
専門知識に基づき、複雑な財産評価や生前贈与の持ち戻しなどを正確に行い、適正な遺留分額と侵害額を算定します。
弁護士が代理で交渉を行うことで、感情的な対立を避け、冷静かつ論理的に話し合いを進めることができます。これにより、適切な結果を得られる可能性が高まります。
相手方が弁護士を立ててきた場合でも、対等に交渉を進めることが可能です。
弁護士は手続きの流れを熟知しており、特に時効の問題に対し、期限内にスムーズかつ的確な対応が可能です。
複雑な手続きや相手方との直接交渉のストレスから解放され、精神的な負担を大幅に軽減できます。
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弁護士の価値は、単に法的な手続きを代行するだけでなく、依頼者が直面する「相続トラブル」全体を解決に導く「プロフェッショナル」である点にあります。
特に、遺留分侵害額請求は、依頼者が「取り戻す」権利を確実に、かつ円滑に実現するための、弁護士の総合的な問題解決能力が試される分野です。弁護士への依頼は、単なる費用ではなく、確実な権利回復、早期解決、そしてストレス軽減といった「投資」として捉えることができます。
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50代の男性が、被相続人の遺言書の内容では自身の取り分がゼロだったにもかかわらず、弁護士による遺留分侵害額請求によって1,200万円の現金と不動産を獲得した事例です。
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相手方が交渉に応じなかったため、弁護士が交渉をして、950万円で示談成立しました。