相続

弁護士が教える!株式の相続、どうしたらいい? やさしく解説

2025-10-04

弁護士が教える!株式の相続、どうしたらいい? やさしく解説


親から受け継ぐ「株式」、そのままで大丈夫?

相続と聞くと、多くの人が「実家や土地」「預金」を思い浮かべるかもしれません。しかし、最近は株式を所有している方も増えています。いざ相続が始まると、「故人が株を持っていたらしいけど、どうすればいいの?」と戸惑ってしまう方が少なくありません。

株式の相続は、預貯金とは少し違う、いくつかの注意点があります。 この記事では、株式を相続することになった方が、安心して手続きを進められるよう、分かりやすく解説していきます。


株式の相続で知っておきたいこと:3つのポイント

まず、株式の相続には、大きく分けて3つのステップがあります。

  1. 株式を「見つける」
  2. 株式を「評価する」
  3. 株式を「分ける」

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

1. 株式を「見つける」

故人がどの証券会社と取引をしていたか、きちんと把握していますか? 「自宅に届いた郵送物」や「パソコンの履歴」など、まずは手がかりを探すことから始めましょう。もし手がかりが見つからない場合は、**「証券保管振替機構(ほふり)」**に情報開示を請求することで、どの証券会社に口座があったかを調べることができます。

故人の財産調査は、相続手続きの最初の難関です。この段階でつまずいてしまう方も多いので、不安な場合は専門家への相談を検討してもよいでしょう。

2. 株式を「評価する」

株式には、大きく分けて**「上場株式」「非上場株式」**の2種類があります。この2つは、相続税の評価方法が大きく異なります。

  • 上場株式:証券取引所で売買されている株式です。市場価格が日々変動しているので、評価は比較的簡単です。
  • 非上場株式:中小企業など、証券取引所に上場していない会社の株式です。市場での取引がないため、客観的な価格がありません。

特に非上場株式は、相続税を計算するための評価方法が非常に複雑です。会社の規模や経営状況によって、いくつかの評価方法(純資産価額方式や類似業種比準方式など)を使い分ける必要があります。

「非上場株式を相続したけど、評価額が予想以上に高くて相続税が払えない…」といった事態に陥ることも珍しくありません。評価額が分からず、相続税の申告期限が迫っているような場合は、税理士や弁護士に相談することが非常に大切です。

3. 株式を「分ける」

遺産分割協議で、株式をどのように分けるかを決めます。 株式は、現金のように簡単に分けることができないため、分割方法で揉めてしまうケースがよくあります。

主な分割方法は、以下の3つです。

  • 現物分割:特定の相続人が株式をそのまま取得します。
  • 換価分割:株式を売却して現金化し、その現金を相続人で分け合います。
  • 代償分割:特定の相続人が株式を取得する代わりに、他の相続人に対して現金を支払います。

この中でも、上場株式の場合は「換価分割」が一番分かりやすく、トラブルになりにくい方法です。しかし、非上場株式の場合はすぐに売却することが難しいため、分割方法で争いになることが多いです。

「会社を継ぐ長男が株式をすべて相続したいと主張しているが、他の兄弟は納得しない」「代償金を用意できない」など、感情的な対立も絡んでくると、話し合いは一気に難航してしまいます。


株式相続でよくあるトラブル:弁護士はここに役立ちます!

株式の相続は、特に以下のような場合にトラブルになりがちです。

1. 故人がどの証券会社を利用していたか不明な場合

故人が株式投資をしていたことは知っていても、どの証券会社に口座があったか分からない、といったケースはよくあります。

このような場合、弁護士は、職権で**「証券保管振替機構」**に照会をかけることができ、故人の口座情報をスムーズに特定することができます。

2. 非上場株式の評価で揉めている場合

非上場株式は、評価方法によって金額が大きく変わることがあります。 「どうしてこんなに評価額が高くなるの?」「この評価は妥当ではない!」と、相続人同士で意見が対立することは珍しくありません。

弁護士は、法律の専門家として、適切な評価方法を提示し、必要であれば不動産鑑定士や税理士といった他士業とも連携して、公平な評価額を算定するサポートを行います。

3. 遺産分割の方法で話し合いがまとまらない場合

特に非上場株式は、現物分割や代償分割が難しいため、争いになりやすい財産です。

「会社を継ぐのは自分なのだから、株式はすべて自分がもらうべきだ」「でも、他の兄弟には何も残らないのは不公平だ」 このように、感情的な対立が加わると、当事者だけで話し合いを続けるのは非常に困難です。

弁護士は、中立的な立場から話し合いを仲介し、それぞれの相続人の権利を尊重しながら、円満な解決策を提案します。また、話し合いで解決できない場合は、裁判所での遺産分割調停や審判を代理し、法的な手続きを進めることができます。

4. 故人の「使い込み」が疑われる場合

故人が生前に、特定の相続人に預金から多額の引き出しを行っていた場合、それは「使い込み」や「特別受益」として、遺産分割の際に考慮されるべきです。 株式の相続においては、「株の売却益を特定の相続人が受け取っていた」といったケースも考えられます。

弁護士は、銀行口座の取引履歴などを調査し、不審な点の有無を確認します。隠された財産を明らかにし、公平な遺産分割を実現するためのサポートを行います。


株式の相続は、早めの相談が安心の鍵

株式の相続は、現金や不動産に比べると、専門的な知識がより必要になります。 特に、非上場株式が絡む場合や、相続人同士の関係が複雑な場合は、トラブルが深刻化する前に、弁護士に相談することをおすすめします。

「こんなこと相談してもいいのかな?」と迷う必要はありません。 弁護士は、あなたの状況を丁寧にヒアリングし、今後の手続きの流れや、考えられるリスク、解決策を分かりやすくご説明します。

相続は、大切な人から引き継いだ財産と、その想いを未来につなぐ大切なプロセスです。株式の相続で不安を感じたら、ぜひお気軽に専門家にご相談ください。私たち弁護士は、あなたの心の平穏と、円満な相続の実現を全力でサポートします。


まとめ

  • 株式の相続は、まず**「株式の発見」**から。証券保管振替機構への照会が有効。
  • **「上場株式」「非上場株式」**では、評価方法が大きく異なる。非上場株式の評価は複雑。
  • 遺産分割は、現物分割、換価分割、代償分割の3つの方法があるが、非上場株式の場合はトラブルになりやすい。
  • 弁護士に相談することで、複雑な手続きや調査の代行相続人同士の交渉代理法的手続きのサポートといったメリットがある。
  • トラブルが深刻化する前に、早めに専門家へ相談することが、円満な解決への近道。

弁護士が教える!代襲相続のトラブルと解決策

2025-10-01

弁護士が教える!代襲相続のトラブルと解決策


家族の絆を守るための相続知識:代襲相続って何?

「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」という言葉、聞きなれない方も多いかもしれません。しかし、これは相続において非常に重要な考え方です。


代襲相続の基本:なぜこんな制度があるの?

相続は、被相続人(亡くなった方)の財産を、その配偶者や子どもといった「法定相続人」が引き継ぐのが基本です。

しかし、もしも相続が開始する前に、法定相続人となるべき方がすでに亡くなっていたり、相続欠格(法律で定められた相続人になれないケース)や廃除(被相続人によって相続権をはく奪されるケース)によって相続権を失っていたりしたらどうなるでしょうか?

その場合、その方の「子ども(被相続人から見て孫)」が、代わって相続人の地位を承継します。これが、代襲相続です。 簡単に言うと、亡くなった方(親)の代わりに、その子ども(孫)が相続することになる、ということです。

代襲相続が発生するケース

  • 相続開始前に相続人が亡くなっている場合
    • 例:祖父が亡くなる前に、その息子(あなたの父)が亡くなっていた場合、その息子(あなたの父)の代わりに、その子どもであるあなた(祖父から見て孫)が代襲相続します。
  • 相続人が相続欠格・廃除によって相続権を失った場合
    • 例:被相続人に対して重大な犯罪行為をしたために相続欠格となった場合、その子(被相続人から見て孫)が代襲相続人となります。

代襲相続がこじれる? よくあるトラブル

代襲相続は、円満な解決を妨げる可能性を秘めています。特に、以下のケースでは注意が必要です。

1. 「使い込み」や「生前贈与」の問題

相続財産は、被相続人が生前に築き上げたものです。しかし、代襲相続人が加わることで、親が被相続人から受けた**「特別受益」(生前贈与や遺贈)や、逆に被相続人の財産を親が「使い込み」**をしていた事実が明らかになることがあります。

例えば、被相続人の子ども(代襲される人)が、生前に親の財産を多額に使い込んでいたとします。その親が亡くなり、その子どもが代襲相続するとなると、他の相続人は「親が使い込んだ分を、子どもが相続するのはおかしい」と反発するでしょう。

特別受益も同様で、親が多額の贈与を受けていた場合、その贈与分を考慮して遺産分割を行う必要があります。しかし、代襲相続人はその事実を知らないことも多く、話が複雑になりがちです。

2. 相続人同士の関係性が薄い

代襲相続が発生すると、被相続人から見て孫やひ孫が相続人となります。特に、疎遠になっていた親戚同士で相続をすることになる場合、連絡先も知らず、お互いの事情もよくわからないまま、話し合いを進める必要があります。 面識のない親戚と突然お金の話をしなければならない、というのは、精神的な負担も大きいものです。

3. 未成年者の問題

代襲相続人が未成年者の場合、遺産分割協議には親権者が参加します。しかし、親権者もまた相続人である場合、利益が相反するため、特別代理人を選任する必要があります。 この手続きは専門知識を要するため、ご自身で行うのは困難な場合があります。


代襲相続のトラブルを円満に解決するための弁護士活用法

代襲相続が絡む相続トラブルは、単なる遺産分割にとどまらず、感情的な対立を生みやすいのが特徴です。このような状況で、弁護士に依頼することは、多くのメリットがあります。

1. 複雑な法律問題を整理し、スムーズな話し合いを促進

代襲相続では、被相続人との関係性や、特別受益・使い込みといった複雑な法律問題が絡み合います。弁護士は、これらの問題を法的に整理し、それぞれの相続人が持つ権利を明確にすることができます。 また、冷静な第三者として、感情的になりがちな話し合いを仲介することで、スムーズな解決へと導きます。

2. 調査と証拠収集をサポート

「使い込みがあった」「多額の生前贈与があった」という疑いがあっても、それを証明する証拠がなければ、話し合いは進みません。弁護士は、銀行口座の取引履歴の開示請求など、証拠収集のための法的手続きを代行します。 また、相手方が応じない場合でも、弁護士照会制度などを活用し、必要な情報を引き出すことが可能です。

3. 遺産分割協議書の作成をサポート

遺産分割協議がまとまったとしても、その内容を正確に記した「遺産分割協議書」を作成しなければなりません。不備があると、後から無効となるリスクもあります。 弁護士は、法律的な観点から完璧な遺産分割協議書を作成し、将来のトラブルを未然に防ぎます。

4. 調停や審判など、法的な手続きを代行

話し合いで解決できない場合、家庭裁判所での調停審判に進むことになります。これらの手続きは非常に複雑で、専門的な知識が必要です。 弁護士は、あなたの代理人としてこれらの手続きを行い、あなたの権利を最大限に守るために尽力します。


代襲相続のトラブル解決は、早期の相談が鍵

代襲相続によるトラブルは、放っておくとますます深刻化します。 「親が使い込みをしていたかもしれない」「代襲相続人と連絡が取れない」「遺産分割の方法で揉めている」といったお悩みがある場合は、できるだけ早く弁護士にご相談ください。 早期にご相談いただくことで、解決の選択肢が広がり、より円満な解決を目指すことができます。

私たち弁護士は、ご家族の絆を壊すことなく、皆さまが納得できる形で相続を終えられるよう、全力でサポートいたします。

相続問題でお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。 初回相談無料の法律事務所も増えていますので、まずは一度、専門家に話を聞いてもらうことをお勧めします。


まとめ

  • 代襲相続は、相続人が亡くなったり相続権を失ったりした場合、その子どもが代わりに相続すること。
  • トラブルの原因は、使い込みや特別受益の問題関係性の薄い相続人との話し合い未成年者が絡むケースなど。
  • 弁護士に依頼することで、法律問題の整理証拠収集遺産分割協議書の作成法的手続きの代行など、スムーズな解決が期待できる。
  • トラブルが深刻化する前に、早めの相談が重要。

相続は、被相続人の方が残してくれた大切な財産と想いを引き継ぐ、人生の大きな節目です。代襲相続が絡む複雑な問題でも、適切な知識と専門家のサポートがあれば、きっと円満に解決できます。

解決事例:兄に全財産を相続させるという遺言書、納得できない妹が遺留分を請求し、現金と不動産を取り戻したケース

2025-09-30

解決事例:兄に全財産を相続させるという遺言書、納得できない妹が遺留分を請求し、現金と不動産を取り戻したケース


大阪の皆さま、こんにちは。かがりび綜合法律事務所の代表弁護士、野条健人です。

今回は、当事務所が実際に解決した相続事例をご紹介します。

ご相談者は、お父様を亡くされた妹様。お父様の死後、お兄様から**「全財産をお兄様に相続させる」**という内容の遺言書を見せられ、納得がいかないと当事務所へお越しになりました。

依頼前の状況:遺言書の内容に納得がいかない

ご相談者である妹様は、遺言書の内容に大きな疑問を抱いていました。

これまで、お兄様は生前、お父様から経済的な援助をたびたび受けていたにもかかわらず、遺言書では妹様には何も残されないことになっていたためです。

妹様は、たとえ遺言書があったとしても、ご自身にも**「取り分」**があるのではないかと感じ、当事務所にご相談いただきました。

依頼内容:遺留分を請求したい

ご相談者からのご依頼は、この遺言書の内容に納得がいかず、ご自身にも遺留分を請求したい、というものでした。

遺留分とは、法律で定められた最低限の取り分であり、たとえ遺言書があっても、これを侵害することはできません。この権利を行使するため、私たちは直ちに手続きに着手しました。

当事務所の対応と解決:粘り強い交渉で納得のいく遺留分を取り戻す

ご依頼を受け、まず私たちは遺言書の内容を精査しました。

その結果、遺言書は間違いなくお父様によって作成されたものであり、お兄様へ**「現金2,000万円と自宅を全て相続させる」**という内容が明記されていました。

そこで私たちは、ご相談者である妹様の代理人として、お兄様に対し遺留分侵害額請求の意思を伝えました。

しかし、お兄様からはなかなか回答がなく、話し合いは難航しました。

そこで、私たちは粘り強く交渉を続けました。

ご兄弟間の感情的な対立を避け、あくまで法的な観点から遺留分について丁寧に説明。

最終的に、遺産の一覧表を作成し、お兄様と協議を重ねた結果、妹様が現金と不動産を遺留分として1,000万円分取り戻すことで合意に至りました。

弁護士からのアドバイス

今回のケースのように、遺言書があったとしても、その内容に納得がいかない場合や、生前の贈与などで不公平感がある場合、遺留分を請求できる可能性があります。

しかし、遺留分請求には法的な知識が必要であり、ご自身で手続きを進めると、感情的な対立からかえって事態が悪化するリスクがあります。

弁護士に依頼することで、遺産の内容を正確に把握し、法的な根拠に基づいて交渉を進めることができます。

もし、今、あなたが遺言書の内容に納得がいかず、お一人で悩んでいるなら、ぜひ一度、かがりび綜合法律事務所にご相談ください。

大阪市、吹田市、茨木市、東大阪市、八尾市、堺市など、大阪府下にお住まいの方からのご相談を、心よりお待ちしております。

弁護士が教える!代襲相続のトラブル解決法|知っておきたい基礎知識と弁護士に相談すべき理由

2025-09-29

弁護士が教える!代襲相続のトラブル解決法|知っておきたい基礎知識と弁護士に相談すべき理由

皆さん、こんにちは。弁護士の井上めぐみです。

相続は、人生で何度も経験するものではありません。だからこそ、いざ相続が始まると「何から始めればいいの?」「手続きが複雑でわからない」といったお悩みを抱える方が多くいらっしゃいます。

特に、お子さんがすでに亡くなっている場合や、孫が相続人になるケースでは、「代襲相続」という聞き慣れない言葉に直面し、さらに不安が大きくなるかもしれません。

この記事では、代襲相続の基本的な仕組みから、実際に起こりやすいトラブル、そして、トラブルを回避するために弁護士に相談するメリットについて、わかりやすく解説していきます。相続で困っている方、これから相続を控えている方に、少しでもお役に立てば幸いです。

代襲相続とは?~孫や甥・姪が相続人になるケース

まずは、代襲相続の基本的な仕組みから確認していきましょう。

代襲相続とは、本来であれば相続人になるはずだった人が、すでに亡くなっているなどの理由で相続できなくなった場合に、その人の代わりに、その人の子が相続人になることをいいます。

たとえば、おじいさまが亡くなられたとします。本来の相続人は、おじいさまのお子さん(あなたのお父さん)です。しかし、お父さんがすでにお亡くなりになっていた場合、お父さんの代わりに、あなた(お孫さん)が相続人になるのが「代襲相続」です。

代襲相続は、以下の2つのケースで発生します。

  1. 被相続人(亡くなった方)の子が、相続開始前に亡くなっている場合 →その子の子(被相続人の孫)が代襲相続人になります。
  2. 被相続人の兄弟姉妹が、相続開始前に亡くなっている場合 →その兄弟姉妹の子(被相続人の甥・姪)が代襲相続人になります。

このように、代襲相続は、故人の遺志を尊重し、血縁関係のある人が公平に遺産を受け継ぐための重要な制度なのです。

代襲相続で起こりやすいトラブルとその原因

「代襲相続」と聞くと、「親が亡くなったのだから、孫が相続するのは当然」と思われるかもしれません。しかし、代襲相続は、通常の相続とは異なる要素が加わるため、思わぬトラブルに発展することが少なくありません。

具体的には、以下のような問題が起こりやすくなります。

1. 相続関係が複雑になり、相続人確定に手間がかかる

代襲相続が発生すると、通常の相続人だけでなく、代襲相続人も含めてすべての相続人を確定させなければなりません。この相続人確定は、戸籍謄本をさかのぼって取得し、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍を調査する必要があります。

代襲相続人が複数いる場合や、再婚や養子縁組など複雑な家族関係がある場合は、さらに調査に時間がかかります。ご自身で戸籍をさかのぼるのは非常に手間がかかり、途中で挫折してしまう方も少なくありません。

2. 代襲相続人同士の面識がなく、遺産分割協議が進まない

代襲相続人、特に被相続人の甥・姪は、被相続人や他の相続人とほとんど面識がないケースも珍しくありません。

遺産分割協議は、相続人全員の合意が必要です。しかし、面識のない人同士が、感情的なしこりや、遺産に対する考え方の違いから、なかなか意見がまとまらないことがあります。

たとえば、「故人とは親交がなかったから、遺産は少しでも多くほしい」と考える代襲相続人に対して、故人の介護をしていた他の相続人が「なぜ何もしなかった人が多くもらえるのか」と反発し、対立が深まってしまうといったケースです。

3. 不動産の評価や分割方法で揉める

相続財産に不動産が含まれる場合、さらにトラブルが複雑になります。特に代襲相続人がいる場合は、「換価分割」という方法が選択されることが多くなります。

換価分割とは、相続財産である不動産を売却し、その売却代金を相続人で分ける方法です。

しかし、この換価分割を行うには、いくつかのステップを順に進めていく必要があります。

  1. 相続人の確定と遺産の調査・評価 →先ほどお話しした通り、代襲相続人がいると、このステップで手間取ることが多いです。
  2. 遺産分割協議の実施 →不動産を売却すること、そして売却代金をどのように分けるかについて、相続人全員の合意が必要です。
  3. 不動産の名義変更(相続登記) →不動産を売却するためには、被相続人から相続人へ名義を変更する必要があります。
  4. 売却活動 →不動産会社に仲介を依頼し、買い手を見つけます。売却価格や時期について、相続人全員の合意が必要となります。
  5. 売却代金の分配 →売却で得た代金を、遺産分割協議で合意した割合で相続人全員に分配します。

これらのステップを、相続人全員で協力して進めるのは簡単なことではありません。特に、代襲相続人が換価分割に反対した場合や、不動産の評価額で意見が対立した場合、協議は難航します。

代襲相続のトラブル解決は弁護士にご相談を

代襲相続は、単に法律上の手続きだけでなく、親族間の人間関係や感情が絡み合うデリケートな問題です。

「このくらいなら自分たちで解決できるだろう」と安易に考えていると、話し合いがこじれてしまい、最悪の場合、家庭裁判所の調停や審判に移行せざるを得なくなることもあります。

そうならないためにも、代襲相続が発生した際は、なるべく早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に依頼することで、以下のようなメリットがあります。

1. 複雑な相続人調査や遺産調査をすべて任せられる

弁護士は、戸籍の取り寄せや相続人の確定といった、煩雑な手続きをすべて代行できます。ご自身で時間と労力をかける必要がなくなるため、精神的な負担が大幅に軽減されます。

2. 公平かつ円滑な遺産分割協議をサポート

代襲相続人を含めた、相続人全員との交渉を弁護士が代理します。法律の専門家が間に入ることで、感情的な対立を避け、冷静な話し合いを進めることができます。

また、不動産の評価や換価分割の手続きについても、専門的な視点からアドバイスを提供し、すべての相続人が納得できる解決策を導き出します。

3. 複雑な手続きやトラブルへの迅速な対応

万が一、話し合いで合意に至らない場合でも、弁護士は家庭裁判所での調停や審判にも対応できます。相続問題に精通した弁護士であれば、法的な手続きをスムーズに進め、トラブルの長期化を防ぐことができます。

まとめ

代襲相続は、相続関係を複雑にし、思わぬトラブルを引き起こす可能性があります。

相続人調査から、遺産分割協議、不動産の換価分割まで、専門的な知識と経験が求められる場面が多々あります。

「うちのケースは代襲相続が発生しているかも」「親族間の関係がこじれてしまいそうで不安」

もし、あなたがこのようなお悩みを抱えているなら、一人で抱え込まず、まずは一度弁護士にご相談ください。

当事務所では、初回相談を[無料/低額]で承っております。お話をじっくり伺い、最適な解決策をご提案させていただきます。

相続は、故人から受け継ぐ大切な財産です。円満な相続を実現できるよう、私たちが全力でサポートいたします。

お気軽にお問い合わせください。

弁護士が教える!「代襲相続」はなぜトラブルになる? 知っておきたい問題点と解決策

2025-09-27

弁護士が教える!「代襲相続」はなぜトラブルになる? 知っておきたい問題点と解決策


家族が亡くなった時、「相続」という言葉を耳にする機会は増えますが、その中に「代襲相続」という、少し聞き慣れない言葉があるのをご存じでしょうか?これは、本来相続人になるはずだった方が、被相続人(亡くなった方)より先に亡くなっていた場合に、その方の代わりに子どもや孫が相続人になるという制度です。

「代わりに相続できるなら、安心じゃないか」と思うかもしれません。しかし、この代襲相続が原因で、思わぬトラブルに発展するケースが少なくありません。今回は、代襲相続がなぜ問題になりやすいのか、そして弁護士に依頼すると何ができるのかを、やさしくお話しします。

代襲相続、まずは基本から押さえておきましょう

代襲相続は、相続順位に関わる重要なルールです。日本の民法では、亡くなった方の財産を相続する人には、法律で定められた順位があります。

<法定相続人の順位>

  1. 常に相続人になる方:配偶者
  2. 第1順位:子ども
  3. 第2順位:親や祖父母(直系尊属)
  4. 第3順位:兄弟姉妹

この順位で、先に亡くなった方がいた場合に代襲相続が起こります。

  • 子どもの代襲相続:亡くなった方に子どもがいて、その子どもが先に亡くなっていた場合、その孫が代わって相続します。孫も亡くなっていれば、ひ孫が代襲します。これを再代襲といいます。
  • 兄弟姉妹の代襲相続:亡くなった方に子どもや親がおらず、兄弟姉妹が相続人になる場合、その兄弟姉妹が先に亡くなっていれば、その甥・姪が代わって相続します。

ここで大事なポイントがあります。 代襲相続は、子どもの場合は下の世代(孫、ひ孫…)にずっと続いていきますが、兄弟姉妹の場合は甥・姪までで止まります。


「まさか」の相続人! 代襲相続がトラブルになる3つの理由

「うちの家族は仲がいいから大丈夫」と思っていても、代襲相続が絡むと、事態は一変することがあります。その背景には、主に3つの理由が隠されています。

1. 見知らぬ親族が突然の相続人に!?

最も多いトラブルの原因は、疎遠な、あるいは全く面識のない親族が、突然相続人として現れることです。

例えば、長年音信不通だった叔父さんが亡くなり、その方が子どものいない方だったとしましょう。この場合、相続人は兄弟姉妹(あなたの父や母、叔父叔母)になります。もし、あなたの父が既に亡くなっていた場合、代襲相続であなたが相続人になるわけです。

ここで、問題になるのが、疎遠だった親族との話し合いです。遺産分割協議は相続人全員で行わなければならないため、見知らぬ甥や姪と顔を合わせ、連絡を取り合い、話し合わなければなりません。しかし、長年連絡を取っていなかったり、感情的なわだかまりがあったりすると、スムーズな話し合いは非常に困難になります。

2. 相続財産の把握が難しい

相続手続きを始めるには、まず、被相続人(亡くなった方)の財産をすべて洗い出す必要があります。預貯金や不動産、株式などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含まれます。

もし、代襲相続人が現れた場合、その方は被相続人の財産状況を全く知らないことがほとんどです。財産目録を開示しても、「本当にこれだけ?」と不信感を抱かれたり、過去の経緯を知らないため、「なぜこの不動産はこんなに評価が低いのか?」と疑問を持たれたりすることもあります。

財産の全容を正確に把握し、その情報を透明性をもって共有するのは、専門家でも難しい作業です。それを、代襲相続人が加わった状況で、当事者だけで進めるのは、さらに大きな労力と精神的負担を伴います。

3. 遺産分割の合意形成が困難になる

遺産分割協議は、相続人全員の合意があって初めて成立します。一人でも反対する人がいれば、協議はまとまりません。

代襲相続人は、被相続人との関係が薄いため、財産に対する思い入れも、他の相続人とは大きく異なる場合があります。例えば、親の介護に尽くしてきた長男が実家を相続したいと考えていても、代襲相続した遠方の甥は「実家を売ってお金で分けたい」と主張するかもしれません。

このように、相続財産に対する価値観や希望が異なるため、互いの主張が平行線をたどり、話し合いが長引くことになります。最終的に、協議が難航して家庭裁判所の遺産分割調停審判に発展するケースも少なくありません。


こんな時こそ弁護士にご相談を

代襲相続が絡む複雑な相続問題は、ご自身だけで解決するのは非常に困難です。そんな時にこそ、弁護士にご相談いただくことで、スムーズな解決へと導くことができます。

1. 全相続人との窓口を一本化できる

疎遠な親族との連絡は、それだけで精神的な負担が大きくなります。弁護士は、あなたの代理人として、他の相続人との連絡や交渉をすべて引き受けます。見知らぬ親族と直接顔を合わせたり、不信感からくる厳しい言葉を投げかけられたりするストレスから解放されます。

2. 適正な遺産分割案を提案できる

弁護士は、法律と過去の判例に基づき、あなたのケースに最適な遺産分割方法を提案できます。例えば、代襲相続人がいる場合でも、特別受益(生前贈与など)や寄与分(介護への貢献など)を正確に計算し、公平な分割案を提示できます。

3. 遺産分割調停・審判まで一貫してサポート

話し合いがこじれて調停や審判に発展した場合でも、弁護士が代理人として裁判所に出廷し、あなたの主張を法的な観点から整理・主張します。これにより、感情的な対立を避け、冷静な議論の場で解決を目指せます。

最後に

代襲相続は、予期せぬトラブルの火種となり得ます。少しでも不安を感じたら、一人で抱え込まず、相続問題に詳しい弁護士に一度相談してみてください。当事務所では、初回のご相談を無料でお受けしています。あなたの不安な気持ちに寄り添い、最適な解決策を一緒に見つけ出すお手伝いをさせていただきます。どうぞお気軽にご連絡ください。

自営業者・個人事業主の相続が特殊な3つの理由

2025-09-24

自営業者・個人事業主の相続が特殊な3つの理由

不動産に関する問題に加え、自営業者・個人事業主の相続には、特有の複雑さが加わります。その理由は、事業と個人の財産が密接に結びついているからです。

1. 事業用資産と個人資産の「境界線」が曖昧

個人事業主の場合、店舗や工場、事業用車両、機械といった事業用不動産や動産はもちろんのこと、事業用の預金口座、さらに売掛金や買掛金、事業のために借り入れた借金まで、事業に関するすべての資産・負債が、個人の遺産として相続の対象となります

この特性は、事業の継続に大きなリスクをもたらします。もし、事業用不動産が法定相続分に従って複数の相続人によって分割されてしまえば、事業の存続が困難になる可能性があります。また、事業を誰も引き継がない場合でも、故人が営んでいた事業の廃業届を提出するなど、複雑な行政手続きが必要となります

ご家族が把握していない事業用資産や負債が、相続財産調査の過程で初めて明らかになることも多く、相続手続きそのものが複雑化する要因となります。

2. 目に見えない「負債」が潜むリスク

「会社の借金は会社が返済するものだから、個人が相続することはない」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。原則としてその通りですが、大きな落とし穴があります。故人が会社の借入金の「連帯保証人」になっていた場合、その保証債務は社長個人の債務とみなされ、相続人に引き継がれます

多くのご家族は、故人が会社の借金を背負っていたことを知らず、相続開始から3ヶ月以内という「熟慮期間」を過ぎてから、債権者からの督促で初めて知るケースが多発しています。この3ヶ月という期間は、莫大な負債を背負うかどうかの選択を決める、非常に重要なタイムリミットです

万が一、この期間内に負債の存在を知り、相続放棄や限定承認の手続きを終えなければ、被相続人のすべての権利義務を無限に承継する「単純承認」をしたものとみなされてしまいます。この時限爆弾のようなリスクを回避するためには、相続が開始したら、事業に関する負債の有無を速やかに、そして徹底的に調査することが最も重要なステップです。

2-3. 事業承継と「遺留分」のジレンマ

遺言書があれば、後継者に事業用資産をすべて相続させることが可能で、事業の分散を防ぐための最も有効な手段であることは間違いありません。しかし、遺言書があれば万事解決というわけではありません。民法では、兄弟姉妹以外の法定相続人には「遺留分」という、法律で保障された最低限の遺産取得分が定められているからです

もし、故人が後継者以外の相続人の遺留分を侵害する遺言を残した場合、遺留分を侵害された相続人は「遺留分侵害額請求」を行うことができます。これは、後継者が事業用資産を売却して金銭を支払う事態に陥る可能性があることを意味します。

たとえ故人の意思であっても、事業を確実に守るためには、遺留分に配慮した遺言書を作成するか、「中小企業経営承継円滑化法」のような特例制度を検討するなど、遺言書だけではカバーできない部分への事前対策が非常に重要になります

事業と家族の未来を守る「3つの事前対策」

不動産や事業資産が絡む相続では、トラブルを未然に防ぎ、家族の未来を守るための「事前の備え」が何よりも大切です。ここでは、特に有効な3つの対策をご紹介します。

1. 事業承継のための「遺言書」作成

遺言書は、事業用資産の分散を防ぎ、故人の意思を確実に後継者に引き継がせるための最も有効な手段です。事業用不動産や預金、株式などを誰に相続させるかを明確に記すことで、後々のトラブルを大きく減らすことができます。

さらに、法的効力を持つ遺言書の本文だけでなく、故人の感謝や家族への想いを綴る「付言事項」を書き添えることをお勧めします。事業用資産が後継者に集中してしまう場合、他のご家族が不満や不公平感を抱くことは少なくありません。なぜこのような分割を望んだのか、他のご家族への感謝の気持ちなどを伝えることで、感情的なわだかまりを和らげ、家族の絆を壊さずに相続を進める効果が期待できます

2. 相続税を大きく減らす「小規模宅地等の特例」の活用

自営業者の皆様にとって、最も有効な節税対策の一つが「小規模宅地等の特例」です。この制度は、被相続人が事業用に使っていた宅地等について、相続税の評価額を最大80%減額できる、非常に強力な特例です

この特例には、大きく分けて二つの種類があり、それぞれに減額割合や適用要件が異なります。

  • 特定事業用宅地等: 被相続人が事業を営んでいた宅地等で、後継者がその事業を継続する場合などに適用されます。
    • 減額割合: 80%
    • 限度面積: 400㎡まで
  • 貸付事業用宅地等: アパートやマンション、駐車場など、被相続人が賃貸事業を営んでいた宅地等に適用されます。
    • 減額割合: 50%
    • 限度面積: 200㎡まで

これらの特例は、相続開始時に急いで適用しようとしても要件を満たせない場合があります。特に、貸付事業用宅地等については「相続開始前3年を超えて事業的規模で貸付事業を行っていた」ことなどの要件があり、生前からの計画が不可欠です。

このように複雑な要件があるため、ご自身のケースにどの特例が適用できるか、そしてどのように対策を進めるべきかを正確に判断するには、専門家のサポートが不可欠です。

3-3. 負債対策と事業の「法人化」

個人事業主の場合、事業の資産と個人の資産が混在しているため、相続時に大きな問題となり得ます。この問題の解決策の一つが、個人事業を「法人化」することです

法人化することで、事業用資産を法人名義に移転させることが可能になります。法人はあくまで個人とは別の人格であるため、事業資産そのものが個人の相続財産から外れることになり、相続税の課税対象を減らす効果が期待できます

また、法人名義の預金や不動産は、個人の死亡によって口座が凍結されるといった事態が起こりにくく、事業の安定的な継続にもつながります

しかし、法人化は万能な対策ではありません。法人の設立には登記費用や登録免許税などがかかりますし、設立後も毎年、赤字であっても約7万円の法人住民税を支払う必要があります。また、個人事業主時代よりも会計処理が複雑化し、税理士費用なども発生します

これらのメリットとデメリットを総合的に比較し、ご自身の事業の規模や資産状況、将来の展望を考慮した上で、最適な方法を判断する必要があります。

安心の未来へ、今できる最初の一歩

相続は、故人の人生を振り返り、残されたご家族が未来へ踏み出すための大切な節目です。特に、不動産や事業用資産が絡む場合、その複雑さからトラブルの種となりがちですが、決して解決できない問題ではありません。

大切なのは、「いつか」ではなく「今」準備を始めることです。

相続は、法的な手続きや税金の問題だけでなく、ご家族の思いや感情が深く関わっています。事前の話し合いや、遺言書の作成、法人化や小規模宅地等の特例といった専門的な対策を通じて、故人の意思を尊重し、ご家族の絆を守るための最善策を講じることができます。

私たちは、単に法的な手続きを代行するだけでなく、皆様の不安に寄り添い、家族の心をつなぐための最善策を一緒に考え、実行をサポートします。相続を「争続」ではなく、家族の絆を深める「機会」に変えるために、まずは、お気軽にご相談ください。

弁護士が教える!不動産にかかわる相続問題と自営業者の関係性

2025-09-22

弁護士が教える!不動産にかかわる相続問題と自営業者の関係性

相続と聞くと、多くの皆様は「いつか訪れるもの」として、漠然とした不安を抱えながらも、具体的な対策を後回しにしてしまいがちではないでしょうか。特に、ご自身やご家族が不動産や事業資産を所有する自営業者の場合、相続はさらに複雑な問題となり得ます。

大切な財産を、誰に、どのように引き継ぐか。それは、故人の人生と、残されたご家族の未来を繋ぐ非常に重要なプロセスです。しかし、事前の準備が不足していると、予期せぬトラブルが発生し、家族の絆を壊す「争続」へと発展してしまうリスクをはらんでいます

ご安心ください。この記事では、不動産や事業資産が絡む相続の本質的な問題点と、その解決策を、一つひとつ丁寧に、やさしい言葉で解説します。皆様の相続を「争続」ではなく、家族の絆を深める「機会」に変えるために、専門家として知っておいていただきたい知識を、一つでも多くお届けできれば幸いです。

なぜ不動産は相続トラブルの火種になるのか?

1-1. 現金にはない不動産特有の難しさ

不動産が相続トラブルの火種となりやすい最大の理由は、その性質にあります。現金や預貯金であれば、金額という明確な基準で簡単に分割できますが、不動産はそうはいきません。土地や建物は、面積や形状、立地条件、築年数など、一つとして同じものが存在しない「特定物」だからです

誰が、どのように、どのくらいの価値で引き継ぐかを決めるには、相続人全員の合意が不可欠となります。たとえば、実家を相続するケースを考えてみましょう。「兄は実家を継ぎ、妹は現金を相続する」という話し合いは、一見シンプルに思えます。しかし、その「実家」に、家族の思い出や故人への思い入れといった、金銭では測れない「感情的な価値」が加わると、問題は一気に複雑になります

この見えない感情的な価値観の違いこそが、不動産相続における対立の根本原因となります。単なる法律や数字の問題ではなく、そこに絡む人々の思いや感情を丁寧に紐解いていくことが、円満な解決への第一歩なのです。

1-2. 不動産相続で陥りがちな「3つの落とし穴」

多くのご相談を受けていると、不動産相続には共通して見られるいくつかの「落とし穴」があることに気づきます。

(1)「とりあえず共有名義」という危険な選択肢

遺産分割協議で相続人全員の意見がまとまらない時、「とりあえず全員の共有名義にしておけばいいか」と安易に考えてしまうケースは少なくありません。しかし、この選択は将来のトラブルを先送りしているに過ぎません。

共有名義の不動産は、その管理や処分に大きな制約が生じます。例えば、不動産を売却したり、建て替えたりするには、共有者全員の同意が必要です。一人でも反対者がいれば、その計画は頓挫してしまい、不動産は身動きが取れないまま放置されることになります。さらに、不動産を貸し出すような場合でも、共有者の過半数の同意が必要となるため、活用も難しくなります

問題は、世代を超えて連鎖することです。共有者の一人が亡くなると、その持分はさらにその相続人へと引き継がれます。これを「数次相続」と呼び、代を重ねるごとに権利関係が複雑化し、面識のない遠い親族が共有者となる事態を招きます。そうなると、売却はおろか、管理の話し合いすら困難になり、将来にわたって大きな負の遺産を残してしまうことになります。

(2)評価額をめぐる「見えない対立」

不動産の価値は、見る人や状況によって大きく変わります。相続の際には、主に3つの評価額が用いられますが、それぞれに大きな開きがあります

  • 実勢価格(市場価格): 実際に不動産が市場で取引される価格です。
  • 相続税評価額(路線価方式・倍率方式): 相続税を計算する際に用いられる公的な評価額です。一般的に、実勢価格の80%程度が目安とされます。
  • 固定資産税評価額: 市区町村が定める評価額で、固定資産税や不動産取得税などの基準となります。実勢価格の70%程度が目安とされ、相続税評価額よりもさらに低い傾向にあります。

遺産分割協議の場では、この評価額の認識のズレがトラブルの核心となります。不動産を売却して現金で平等に分けたい相続人は、市場の価値である「実勢価格」を主張する傾向にあります。これは、実際に得られる金額を基準に自分の相続分を確保したいという経済的な動機に基づいています

一方、不動産を取得して住み続けたい相続人は、「売却しないのだから売却価格は関係ない」と考え、代償金の負担を抑えるために「固定資産税評価額」や「相続税評価額」といった低い評価額を主張することが多くなります。これは、「経済的利益」よりも「居住の継続や思い出」という価値観を優先した結果であり、異なる価値観の衝突に他なりません。

この「見えない対立」を解消するためには、事前に専門家を交え、客観的な評価と、それぞれの価値観を尊重した話し合いを進めることが非常に重要です。

遺留分トラブルで自宅を失う不安を解消。自宅とマンション取得に成功

2025-09-19

大阪の皆さま、こんにちは。かがりび綜合法律事務所の代表弁護士、野条健人です。

今回は、当事務所がセカンドオピニオンのご相談からご依頼を受け、複雑な相続問題を解決した事例をご紹介します。この事例は、「全財産を兄に」という遺言書の内容に対し、自宅不動産とマンションの取得を勝ち取ったケースです。


解決事例:遺留分トラブルで自宅を失う不安を解消。自宅とマンション取得に成功

依頼前の状況

ご依頼者は、お父様が亡くなられ、遺言書の内容が「全財産を兄に相続させる」というものだったため、ご自身で兄と遺留分侵害額請求調停を行っていました。しかし、当時の弁護士の方針や対応に不安を感じ、セカンドオピニオンとして当事務所へご相談にいらっしゃいました。

お父様の財産は、主に預貯金と不動産でしたが、預貯金は兄によってほとんど使い込まれており、残高がわずかでした。ご依頼者は、お父様名義の自宅不動産に住んでおり、今後もそこに住み続けたいという強いご希望がありました。また、資産価値の高いマンションの一室も取得したいと考えていました。

依頼内容

ご依頼者からのご依頼は、預貯金が使い込まれた分も含めて、遺留分侵害額請求を行い、ご希望である自宅不動産とマンションの一室を取得することでした。

当事務所の対応と解決

ご依頼を受け、私たちは直ちに預金口座の取引履歴を詳細に調査しました。

その結果、兄による多額の使い込みが判明。私たちは、遺留分侵害額請求調停において、これを「お父様から兄への生前贈与(特別受益)」と強く主張しました。

粘り強い交渉の結果、兄もこの多額の特別受益を認めざるを得なくなりました。

特別受益が認められたことで、遺留分算定の基礎となる財産が増え、ご依頼者の取り分も増額しました。この結果、ご依頼者は、兄にわずかな代償金を支払うことで、ご希望通りに自宅不動産とマンションの一室を取得することができました。

経済的な利益としては、代償金を差し引いても約3,500万円に相当する財産を獲得することに成功し、ご依頼者が望んだ自宅を守ることができました。また、お父様の形見分けについても、弁護士立ち会いのもと、現地で実施し、円満に完了しました。

弁護士からのアドバイス

今回の事例のように、特定の相続人が遺産を使い込んでいる場合、そのままにしておくと、本来あなたが受け取るべき財産が失われてしまいます。しかし、専門家が調査することで、使い込みや特別受益の事実を明らかにし、正当な権利を主張することが可能です。

大阪市、吹田市、茨木市、東大阪市、八尾市、堺市など、大阪府下にお住まいの方で、相続について少しでも不安や疑問をお持ちでしたら、まずは一度、かがりび綜合法律事務所にご相談ください。

遺言書の内容に納得いかない時の選択肢|遺留分侵害額請求と専門家への相談

2025-09-17

遺言書の内容に納得いかない時の選択肢|遺留分侵害額請求と専門家への相談

「遺言書が見つかったけれど、自分に割り当てられた財産がほとんどない…」

相続が発生した際、遺言書の内容が特定の相続人に著しく偏っていると、他の相続人にとっては大きな不満や不公平感が残ります。

しかし、もしご自身の相続分があまりにも少なく、遺言書の内容に納得できない場合は、遺留分侵害額請求を検討する価値があります。


遺留分侵害額請求とは?

遺留分とは、兄弟姉妹(甥姪)を除く法定相続人に保障された、最低限の遺産を取得できる権利です。遺言書や生前贈与によって、この遺留分が侵害されている場合、その不足分を金銭で支払うよう、多めに財産を受け取った相続人に対して請求できます。これが遺留分侵害額請求です。

遺留分として請求できる金額は、被相続人の全財産(遺産総額)に遺留分の割合を掛け合わせて計算します。この遺産総額を正確に把握することが、適切な遺留分を確保するための非常に重要なポイントです。

特に、不動産や非上場株式などは、評価方法によって金額が大きく変わることがあります。当事務所では、専門的な知識とネットワークを活かし、遺産の範囲を漏れなく特定し、適正な遺産評価をサポートします。

遺留分問題は、早期の専門家への相談が鍵

遺留分を巡る問題は、相続人同士の感情的な対立が激しくなりがちです。当事者だけで話し合いをしようとしても、かえって事態が悪化し、解決が遠のいてしまうケースが多く見られます。

遺留分にまつわる問題が発生した場合は、早い段階で弁護士にご相談ください。

弁護士が介入することで、感情的なやり取りを避け、法的な根拠に基づいた冷静な交渉を進めることができます。

トラブルではない案件も、お気軽にご相談ください

当事務所は、遺留分をはじめとする相続トラブルの解決だけでなく、トラブルになる前の**「終活」**や、相続手続き全般についても幅広く対応しています。

例えば、以下のようなお悩みにも親身に対応いたします。

  • 配偶者や子どもがいないため、将来のことが不安だ
  • 不動産の処分や管理を代理してほしい
  • 市役所や金融機関での手続きが難しくなった
  • 遺産分割協議はまとまっているが、戸籍の収集や名義変更を任せたい
  • 突然の事故で身内を亡くし、事故対応と相続手続きをまとめて依頼したい

それぞれの相談に、弁護士が親身になって対応いたしますので、終活や遺産相続に関するお悩みや疑問点は、お気軽に当事務所にご相談ください。


【お問い合わせ先】

遺産分割は不動産と預貯金で違う?

2025-09-15


遺産分割は不動産と預貯金で違う?|専門家が解説する遺産分割の原則と例外

相続財産の分割は、現金や預貯金と、土地や建物などの不動産では進め方が大きく異なります。特に不動産は、その分け方を巡って相続人同士の意見が対立しやすく、相続トラブルの大きな原因となりがちです。

今回は、相続財産の種類に応じた遺産分割の原則と、話し合いを円滑に進めるためのポイントについて解説します。


遺産分割の基本原則:物理的な分割が難しい不動産

預貯金は、相続分に応じて簡単に分けることができます。しかし、不動産は物理的に切り分けることが難しいため、遺産分割においては以下のいずれかの方法を選択するのが一般的です。

1. 代償分割

特定の相続人が不動産を単独で取得する代わりに、他の相続人に対して、その相続分に相当する金額を金銭で支払う方法です。この方法であれば、不動産を売却せずに済みますが、代償金を支払う側に十分な資金力が求められます。

2. 換価分割

不動産を売却して現金化し、その売却代金を相続分に応じて分割する方法です。相続人全員が不動産を必要としていない場合や、公平性を最も重視したい場合に適しています。

3. 共有分割

不動産を売却せず、複数の相続人が共有名義で所有する方法です。手続きが比較的簡単ですが、将来的に不動産の売却や修繕が必要になった際に、共有者全員の合意が必要となるため、新たなトラブルの火種となるリスクを抱えています。

遺産分割の「原則」と「例外」|裁判所が重視する公平性

遺産分割は、相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で進めるのが基本です。しかし、話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の遺産分割審判に移行することになります。

この遺産分割審判では、裁判官が遺産の具体的な分割方法を決定しますが、その判断基準は**「公平性」**です。

特に不動産については、**「共有分割は、共同相続人間に特別な事情がない限り、強制すべきではない」**という判例があります。これは、共有関係が将来のトラブルにつながる可能性を裁判所が重視しているためです。

そのため、もし遺産分割審判に発展した場合、代償分割や換価分割といった、より公平で実効性のある解決策が提示されることが多いです。

相続トラブルを防ぐためのアドバイス

相続を円滑に進めるためには、以下の点に注意することが重要です。

1. 遺言書の作成

遺言書は、ご自身の意思を明確にし、相続争いを未然に防ぐための最も有効な手段です。遺言書の作成は、専門家である弁護士に依頼し、法的に有効かつ将来的な変動にも対応できる柔軟な内容にしておくことをおすすめします。

2. 専門家への相談

相続は、法的な知識だけでなく、ご家族の感情が複雑に絡み合う問題です。ご自身だけでは解決が難しいと感じた際は、早めに弁護士にご相談ください。弁護士は、客観的な視点から問題点を整理し、お客様の状況に最適な解決策をご提案します。


弁護士からのメッセージ

相続は、誰にとっても避けて通れない問題です。大切なご家族との絆を壊さないためにも、適切な知識と準備が不可欠です。

遺産分割に関するお悩みやご不明点は、お一人で抱え込まず、お気軽に当事務所にご相談ください。私たちは、お客様のお気持ちに寄り添いながら、最適な解決策をご提案いたします。


【お問い合わせ先】

弁護士法人かがりび綜合法律事務所 代表弁護士 野条健人

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