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弁護士野条健人の相続ブログ|相続問題を弁護士に依頼する5つのメリット

2025-09-07

弁護士野条健人の相続ブログ|相続問題を弁護士に依頼する5つのメリット

こんにちは。弁護士の野条健人です。 「相続なんて、家族で話し合えば何とかなるだろう」 そう考えていらっしゃる方も多いかもしれません。

しかし、相続は単に故人の財産を引き継ぐだけの手続きではありません。相続財産の種類や金額、そして何よりも、相続人同士の関係性によって、複雑な問題が次々と発生することがあります。

相続トラブルが発生した際、法的な知識がないままご自身で対応しようとすると、問題が長期化したり、思わぬ損をしてしまったりする可能性があります。 今回のブログでは、相続問題を弁護士に依頼することで得られる、5つの大きなメリットについてお話しします。


メリット1:トラブルの早期解決

相続トラブルは、時間が経てば経つほど、感情的な対立が深まり、解決が難しくなります。 遺産分割協議が難航したあげく、調停や裁判まで発展した場合、弁護士の介入なしに適切な対応を行うのは困難です。

弁護士は、法律の専門家として、冷静かつ客観的な視点から問題点を整理し、解決への道筋を示します。 早期に弁護士に相談することで、問題がこじれる前に手を打ち、スムーズに解決へと導くことができます。

メリット2:適正な遺産金額の分配が得られる

相続財産に不動産や株式などが含まれる場合、その評価額をめぐって意見が対立することがよくあります。 「実家は古くて価値がないだろう」「いや、立地がいいから高額なはずだ」といった主観的な評価では、公平な分割は望めません。

弁護士は、不動産鑑定士などの専門家と連携し、客観的な評価額を算出します。 また、特定の相続人が受けた生前贈与(特別受益)や、被相続人の療養看護に尽力した場合(寄与分)など、法律に基づいた適正な主張を行うことで、あなたが本来受け取るべき公正な取り分を確保します。

メリット3:親族間の争いを未然に抑止できる

相続問題は、ご家族の絆を壊してしまう可能性があります。 しかし、弁護士が間に入ることで、ご家族が直接交渉することなく、冷静な話し合いを進めることができます。

第三者である弁護士は、特定の相続人に肩入れすることなく、中立的な立場から交渉を行います。 これにより、感情的な衝突を避け、ご家族の関係性を守りながら、円満な解決を目指すことができます。

メリット4:交渉や書類作成などの負担が軽減される

遺産分割協議から、遺産の名義変更、相続税の申告など、相続には煩雑な手続きや、膨大な量の書類作成が伴います。 仕事や家事、育児などで忙しい中で、これらの作業をすべてご自身で行うのは、大きな負担となります。

弁護士に依頼すれば、ほかの相続人との交渉から、必要書類の作成・収集まで、ほぼすべての対応を一任できます。 あなたは、ご自身の生活に集中しながら、相続手続きを進めることができるのです。

メリット5:親族間での交渉などの精神的な負担が軽減される

相続問題の最大の苦痛は、何よりも精神的な負担ではないでしょうか。 長年信頼してきたご家族との間に生じた不信感や、話し合いが進まないことへの焦り、将来への不安など、多くのストレスを抱えることになります。

弁護士に依頼すれば、こうした精神的な負担から解放されます。 私たちがあなたの代理人として、交渉の矢面に立つことで、あなたは安心して日常を過ごすことができます。 私たちは、あなたの気持ちに寄り添い、不安な気持ちを少しでも和らげるお手伝いをします。


早期の相談が、最善の選択です

相続トラブルは、ご自身でどうにかしようとせず、早い段階で弁護士に相談するのが最善の選択です。 相続問題を弁護士に依頼すれば、煩雑な手続きから、ご家族との交渉まで、すべてをお任せいただけます。

スムーズに相続を進め、ご家族の絆を守るためにも、ぜひ一度、私たち弁護士法人かがりび綜合法律事務所にご相談ください。 私たちは、あなたの力強い味方となり、円満な解決を目指します。

弁護士法人かがりび綜合法律事務所 弁護士 野条 健人

遺言書があっても遺産分割協議が必要なケース

2025-09-06

弁護士が教える!遺言書があっても遺産分割協議が必要なケース

「遺言書があれば、遺産分割協議は必要ない」と思っていませんか?実は、遺言書があっても、遺産分割協議を行わなければならないケースがあります。

今回は、遺言書と遺産分割協議の関係、そして「遺言執行者」の重要性について、相続の専門家が解説します。


遺言書の効力と遺産分割協議

遺言書は、被相続人の最後の意思を尊重するためのものです。法的に有効な遺言書があれば、その内容が優先され、遺産分割協議は原則として不要となります。

しかし、以下のようなケースでは、遺産分割協議が必要になります。

  • 遺言書の内容に遺産分割の指示がない: 例えば、「全ての財産を長男に相続させる」という包括的な内容の遺言書の場合、具体的な財産の分け方について、相続人全員で協議が必要になることがあります。
  • 遺言書の内容と異なる分割を望む: 遺言書があっても、相続人全員の合意があれば、遺言書と異なる内容で遺産を分割することができます。この場合、遺言書の内容は無視して、相続人全員で遺産分割協議書を作成する必要があります。

遺言執行者の役割と重要性

遺言執行者は、遺言書の内容を具体的に実現する役割を担います。

遺言執行者の就任は義務ではありませんが、遺言書で指定されている場合は、遺言執行者が責任を持って手続きを進めることになります。

特に以下のようなケースでは、遺言執行者がいることで手続きが円滑に進みます。

  • 特定の財産を遺贈する場合: 不動産や預貯金など、特定の財産を相続人以外の第三者に遺贈する場合、遺言執行者がいなければ、相続人全員の協力が必要となります。
  • 遺産分割方法の指定: 遺言書で遺産分割の方法が指定されている場合でも、具体的な手続きを進めるには、遺言執行者がいるとスムーズです。

遺言執行者の職務は、相続財産の調査から、不動産の名義変更、遺贈の実行まで多岐にわたります。遺言執行者がいない場合、これらの手続きは相続人全員が協力して行わなければならず、手間や時間がかかってしまうことがあります。

まとめ:遺言書は「終わり」ではない、円満な相続のための「始まり」

遺言書は、ご自身の最後の意思を明確にし、相続争いを防ぐための非常に有効な手段です。しかし、遺言書があれば全てが解決するわけではありません。

遺言書の内容に不備があったり、相続人が納得いかない場合、遺言書を無視して協議を進めることもあります。

このような事態を避けるためには、遺言書を作成する段階で、相続問題に精通した弁護士に相談し、法的に有効かつ、ご家族の状況に合った内容で作成しておくことが重要です。

「公正証書遺言」が最強の理由とは?トラブルを回避する3つのメリット

2025-09-05

弁護士野条健人の相続ブログ|「公正証書遺言」が最強の理由とは?トラブルを回避する3つのメリット

こんにちは。弁護士の野条健人です。 今回のブログでは、相続トラブルを未然に防ぐために、私が最もお勧めしている**「公正証書遺言」**について、そのメリットをわかりやすくお話ししたいと思います。

「遺言書」と聞くと、自分で書く「自筆証書遺言」をイメージされる方が多いかもしれません。しかし、私がこれまで多くの相続案件に携わってきた経験から、「公正証書遺言」こそが、ご家族を守る最強のツールだと断言します。

では、なぜ公正証書遺言がそれほど強力なのでしょうか。その理由を3つのメリットに分けてご説明します。


メリット1:法律の専門家が作成するから「無効」にならない

自筆証書遺言は、ご自身で気軽に作成できる一方で、書き方を少しでも間違えると、法的に無効になってしまうリスクがあります。

例えば、日付の記載がなかったり、署名がなかったり、財産の内容が曖昧だったりすると、せっかく書いた遺言書が無効と判断されてしまうのです。 そうなると、ご本人の意思は反映されず、結局は相続人全員で遺産分割協議をしなければなりません。

一方、公正証書遺言は、公証役場の公証人が、法律の専門家として、ご本人の意思を正確に聞き取り、法的に有効な文章を作成します。 そのため、「書き方が間違っていて無効になる」という心配がありません。 ご自身の想いを、確実に実現させることができるのです。

解決事例:自筆証書遺言の「無効」が招いたトラブル

ご主人が亡くなり、自筆で書かれた遺言書が見つかりました。 「すべての財産は、妻に相続させる」 と書かれていましたが、日付の記載がなく、遺言書は無効と判断されました。

その結果、ご主人のご兄弟が「私たちにも遺留分があるはずだ」と主張し、遺産分割協議は泥沼化してしまいました。 もし、ご主人が公正証書遺言を作成していれば、ご自身の意思は確実に尊重され、奥様もご兄弟も、このような辛い思いをすることはなかったでしょう。


メリット2:家庭裁判所の「検認」手続きが不要だからスムーズ

自筆証書遺言は、見つかった後、家庭裁判所で「検認」という手続きをしなければなりません。 この手続きは、遺言書を偽造・変造から守るために行うもので、相続人全員に通知が送られ、全員が立ち会う必要があります。

しかし、この手続きには、約1~2ヶ月程度の時間がかかり、手間も費用もかかります。 また、遠方に住んでいる相続人がいる場合、手続きがさらに複雑になることもあります。

一方、公正証書遺言は、公証人が作成した時点ですでに法的に有効なものとして認められているため、この検認手続きが不要です。 相続開始後、すぐに遺言書の内容に従って手続きを進めることができるので、ご家族の負担を大きく減らし、スムーズに相続を完了させることができます。

解決事例:検認手続きの煩雑さに困惑したケース

ご両親が亡くなり、遺品の中から自筆の遺言書が見つかりました。 ご兄弟は、早く相続手続きを済ませて、前に進みたいと思っていましたが、検認手続きが必要だと知り、その煩雑さに困惑しました。

兄は仕事が忙しく、妹は海外に住んでいたため、日程調整が難航しました。 その結果、手続きがなかなか進まず、ご兄弟の間で「なぜこんなに時間がかかるんだ」と不満が募り、関係がギクシャクしてしまいました。

公正証書遺言であれば、このような手続きの手間や時間がかからず、ご家族の精神的な負担も軽減できます。


メリット3:原本が公証役場で保管されるから「紛失」の心配がない

自筆証書遺言は、自宅で保管するため、紛失したり、火災などで焼失したりするリスクがあります。 また、特定の相続人が遺言書を隠したり、破棄したりする可能性もゼロではありません。

しかし、公正証書遺言は、原本が公証役場に厳重に保管されます。 そのため、紛失や偽造、破棄のリスクがありません。 ご家族に遺言書の存在を知らせておけば、万が一、見つからない場合でも、公証役場で探してもらうことができるのです。

これは、ご本人の意思が確実に守られるだけでなく、相続人全員にとっての安心材料にもなります。

まとめ

公正証書遺言は、作成に手間と費用がかかりますが、それ以上の大きなメリットがあります。 ご自身の想いを確実に実現し、何よりも**「残されたご家族が争うことなく、円満に相続を終えられる」**という安心感を得ることができます。

「遺言書はまだ早い」「自筆で書けば十分だろう」 そう思っている方もいらっしゃるかもしれません。 しかし、いざという時にご家族が困らないように、また、ご自身の最後の想いを確実に伝えるためにも、公正証書遺言の作成をぜひご検討ください。

当事務所では、ご依頼者様の想いを丁寧にヒアリングし、公証人との手続きをサポートするなど、公正証書遺言の作成を全面的にお手伝いしています。 「何から始めればいいかわからない」という方も、まずはお気軽にご相談ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

弁護士法人かがりび綜合法律事務所 弁護士 野条 健人

相続の専門家が解説|知っておきたい3つの相続トラブル

2025-09-04

相続の専門家が解説|知っておきたい3つの相続トラブル
相続は、誰にとっても避けて通れない問題です。しかし、法律的な知識がないまま進めると、思わぬトラブルに巻き込まれることがあります。

今回は、私たちがご相談を受ける中で特に多い、知っておくべき3つの相続トラブルについて、その解決策を分かりやすく解説します。

  1. 行方不明の相続人がいるケース
    「長年連絡が取れない兄弟がいて、遺産分割協議が進められない」

遺産分割協議は、法定相続人全員の合意が必要です。もし、相続人の中に連絡先が分からない人がいる場合、協議は事実上停止してしまいます。

このような場合でも、戸籍の調査で相手方の住所を特定できれば、連絡を取ることが可能です。しかし、戸籍の調査にも限界があり、住所が特定できない場合は、不在者財産管理人を選任するなどの法的手段を講じる必要があります。

  1. 遺言書に「条件」が付いているケース
    「長男が結婚したら財産を相続させる」
    「三男が重度障害を負ったら、全財産を相続させる」

このように、遺言書に条件が付いている場合、その遺言書は有効なのでしょうか?

法律上、遺言書に条件を付すこと自体は可能です。しかし、上記のように「〜したら」という条件が不明確だと、その遺言書は無効と判断される可能性があります。

遺言書に条件を付す場合は、客観的に明確に判断できるような具体的な内容にすることが重要です。

  1. 「内縁の妻」に相続権はあるか?
    「事実婚の関係にあった夫が亡くなった。夫の遺産を相続できるか?」

内縁関係(事実婚)の夫婦には、法律上の夫婦のような相続権はありません。したがって、遺言書がない限り、内縁の妻が夫の財産を相続することはできません。

内縁の妻が夫の財産を取得するためには、遺言書を作成してもらう、あるいは死因贈与契約を結んでおくなどの生前対策が必要です。

トラブルになる前に、専門家へご相談を
これらのトラブルは、いずれも法的な知識がないと解決が難しい問題です。ご自身だけで対応しようとすると、かえって事態が悪化してしまう可能性があります。

遺産相続に関するお悩みや疑問は、お一人で抱え込まず、私たち専門家にご相談ください。

弁護士野条健人の相続ブログ|「共有」は「共倒れ」の始まり?共有物分割のトラブルを避けるために

2025-09-03

弁護士野条健人の相続ブログ|「共有」は「共倒れ」の始まり?共有物分割のトラブルを避けるために

こんにちは。弁護士の野条健人です。 相続のご相談をお受けしていると、「実家が兄と私の共有名義になっているのですが、どうすればいいでしょうか?」というお悩みをよく耳にします。

一つの不動産を複数人で所有する**「共有」**は、一見すると公平なようでいて、実は将来のトラブルの火種になりかねません。私はこれを「共倒れ」と呼んでいます。

今回のブログでは、共有名義の不動産がなぜトラブルになりやすいのか、そして、その問題を解決するための**「共有物分割」**について、具体的な事例を交えながらお話ししたいと思います。


なぜ「共有」は「共倒れ」の始まりなのか?

共有名義の不動産は、次のような問題が起こりやすいのです。

  1. 意思決定が困難になる 建物の大規模な修繕や売却など、共有不動産に関する重要な決定をするには、原則として共有者全員の同意が必要です。共有者の一人でも反対すると、何も進めることができなくなってしまいます。
  2. 維持費や税金の負担をめぐる争い 固定資産税や管理費、修繕費などは、共有者全員で負担することになります。しかし、「私は住んでいないのに、なぜ私が払わなければならないのか」「もっと安く済む方法があるはずだ」といった不満から、対立が生まれることがあります。
  3. 相続がさらに複雑になる 共有者が亡くなった場合、その持分はさらに細分化され、次の世代に引き継がれます。これにより、共有者がネズミ算式に増えていき、将来的にますます意見をまとめることが難しくなります。

これらの問題が重なり、最終的には**「共有状態のまま放置」**という、最も望ましくない状態に陥ってしまうのです。

共有名義の不動産を解消する「共有物分割」とは?

「共有物分割」とは、共有名義の不動産を、共有状態から単独名義に変更するための手続きです。 この手続きには、大きく分けて以下の3つの方法があります。

  1. 現物分割
  2. 代償分割
  3. 換価分割

1. 現物分割:一つの土地を複数に分けて所有する

これは、一つの土地を物理的に複数に分割し、それぞれの共有者が単独で所有する方法です。

【解決事例:土地を分筆して解決したケース】

ご兄弟で共有していた広い土地がありました。 兄は「この土地をすべて相続し、将来はここに家を建てたい」と考えていました。一方、弟は「土地を売却して、現金で分けたい」と主張していました。 話し合いは平行線をたどっていましたが、私は、土地を2つに分割する「分筆」を提案しました。

具体的には、兄が家を建てるのに十分な面積を確保し、弟が売却しやすいように、道路に面した部分を分筆して、それぞれが単独で所有することにしました。 この方法であれば、兄は土地を守ることができ、弟は自分の持分を自由に売却して現金化することが可能になります。 結果的に、お互いの希望が叶う形で、円満に共有状態を解消することができました。


2. 代償分割:共有者が他の共有者の持分を買い取る

これは、特定の共有者が、他の共有者の持分を金銭で買い取る方法です。 共有名義の実家に住み続けたい、といった場合に有効な手段です。

【解決事例:実家を買い取って単独名義にしたケース】

ご両親が亡くなり、実家が3人兄弟の共有名義になりました。 長男は実家に住み続けたいと希望していましたが、他の兄弟はすでに持ち家があり、代償金を受け取りたいと考えていました。 長男は代償金を支払うだけの十分な現金がなかったため、話し合いが進みませんでした。

私はまず、実家の客観的な評価額を算出し、その金額を基準に代償金の金額を提示しました。 その上で、長男が代償金を支払うための資金を、金融機関からの融資でまかなうことを提案しました。 その結果、長男は実家を単独で所有することができ、他の兄弟も納得のいく代償金を受け取ることができました。


3. 換価分割:不動産を売却して代金を分ける

これは、共有不動産全体を売却し、その売却代金を共有者で分ける方法です。

【解決事例:誰も住む予定がない実家を売却したケース】

ご兄弟で実家を共有していましたが、全員が遠方に住んでおり、実家に住む予定はありませんでした。 しかし、いざ売却しようとしても、共有者の一人が「まだ売るにはもったいない」と反対し、手続きが進みませんでした。

私は、反対している共有者に対して、空き家のまま放置することのリスク(固定資産税、維持管理の手間、老朽化による価値の低下など)について、具体的に説明しました。 また、将来的にさらに共有者が増えることで、売却がますます困難になる可能性についても伝えました。 冷静な客観的事実を伝えることで、最終的に共有者全員が売却に同意し、得られた売却代金を公平に分ける形で解決することができました。

まとめ:共有状態を解消することが、将来の安心につながる

「共有」という状態は、一見、公平に見えますが、将来的に大きなトラブルに発展するリスクを抱えています。 もし、ご家族と共有名義の不動産をお持ちでしたら、将来、**「誰がどうやって使うのか」「管理費はどうするのか」**について、早い段階で話し合うことをお勧めします。

そして、話し合いが難しい場合は、専門家である弁護士にご相談ください。 弁護士は、単に法律を適用するだけでなく、皆様の間に立ち、冷静な仲介役として、最適な解決策をご提案します。 共有状態を解消することが、ご家族の絆を守り、将来の安心につながるのです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

弁護士法人かがりび綜合法律事務所 弁護士 野条 健人

弁護士野条健人の相続ブログ|大阪の相続なら、かがりび綜合法律事務所へ

2025-09-02

弁護士野条健人の相続ブログ|大阪の相続なら、かがりび綜合法律事務所へ

こんにちは。弁護士の野条健人です。 私はこれまで、大阪府内にお住まいの多くのご依頼者様の相続問題に携わってきました。 大阪には、全国的にも特徴的な相続の傾向があります。それは、以下の2つです。

  1. ご自宅や不動産に関するご相談が多い
  2. 昔ながらのご商売や会社を引き継ぐご相談が多い

今回のブログでは、なぜ大阪でこのような相続問題が起こりやすいのか、そして、弁護士としてどのように解決に導いてきたのかを、具体的な事例を交えてお話ししたいと思います。


なぜ大阪の相続は「不動産」と「事業承継」が鍵となるのか

大阪は、東京に次ぐ日本の経済の中心地です。 都心部には高層マンションやオフィスビルが立ち並び、郊外には長年住み継がれてきた戸建て住宅や、代々受け継がれてきた土地が多く存在します。

そのため、相続財産に占める不動産の割合が高い傾向にあります。 特に、都心部に近い土地は、路線価も高く、相続税の負担が大きくなることも珍しくありません。

また、「商都」とも呼ばれる大阪には、昔からご家族で商売をされてきた方も多くいらっしゃいます。 ご自身が立ち上げた会社や、ご両親から引き継いだ事業を、次の世代にどう引き継ぐか。 これは、会社の未来を左右する重大な決断であり、同時にご家族の将来を左右する、非常にデリケートな問題となります。


大阪の相続問題解決事例

私が実際に担当した、大阪ならではの相続問題解決事例を2つご紹介します。

解決事例1:大阪市内の「家屋敷」をめぐる兄弟の対立

大阪市内にご両親が所有していた家屋敷をめぐり、長男と長女が対立したケースです。 長男は「自分がこのまま住み続けて、両親の家屋敷を守っていきたい」と強く希望していました。 一方、長女はすでに持ち家があり、「住む予定もないので、売却して公平に現金で分けてほしい」と主張しました。

私はまず、当事者であるご兄弟、そしてご親族の皆様に、この家屋敷が持つ「金銭的な価値」と「感情的な価値」について、丁寧に説明しました。 そして、この家屋敷が建つ土地の価値を、地元の不動産鑑定士に依頼して客観的に評価しました。

その結果、長女が納得できるだけの金額を長男が代償金として支払うことで、最終的に合意に至りました。 長男は思い出の詰まった家屋敷を守ることができ、長女も公平な分配を受けることができました。

解決事例2:東大阪の「町工場」の事業承継

東大阪で長年、ご家族で町工場を経営されていたご主人が亡くなったケースです。 ご主人の遺産は、事業で使う土地と建物、そして会社の株式でした。 ご家族には、ご主人の後を継ぎたいという息子様と、別の道に進んでいる娘様がいらっしゃいました。

息子様は「会社を自分が引き継いで、父の事業を守っていきたい」と強く希望していました。 一方、娘様は「兄だけが会社を継ぐのは不公平だ。会社を売却して、現金を分けてほしい」と主張し、対立が生まれました。

私はまず、会社の財務状況を徹底的に分析し、株式の価値を正確に評価しました。 その上で、息子様が会社を承継する代わりに、娘様に代償金を支払う**「代償分割」**を提案しました。

しかし、息子様には代償金を支払うだけの現金がありませんでした。 そこで私は、息子様が会社の事業資産を担保に金融機関から融資を受け、その資金を代償金に充てることを提案しました。 この提案にご家族全員が納得し、息子様が事業を無事に承継することができました。


大阪の相続を円満に解決するために

これらの事例からもわかるように、大阪の相続では、不動産や事業承継に関する専門知識と、ご家族の想いを尊重する丁寧なヒアリングが不可欠です。

当事務所は、大阪市中央区に拠点を置き、大阪の地域の事情に精通しています。 大阪の不動産事情や、大阪ならではの事業承継の課題を深く理解しているからこそ、ご依頼者様の状況に合わせた最適な解決策を提案できるのです。

「実家の相続で揉めている」 「両親が遺した事業をどう引き継げばいいかわからない」 「何から手をつけていいのかわからない」

もし、このようなお悩みがありましたら、お一人で抱え込まず、ぜひ一度ご相談ください。 私たちは、皆様の不安を少しでも和らげ、ご家族の絆を守るお手伝いをさせていただければ幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

弁護士法人かがりび綜合法律事務所 弁護士 野条 健人

借金が多い相続でも諦めない!限定承認と相続財産管理人の活用法

2025-09-01

借金が多い相続でも諦めない!限定承認と相続財産管理人の活用法

相続財産に借金が含まれている場合、「相続放棄」という選択肢をまず考える方がほとんどです。しかし、相続人が一人でも相続放棄を拒否したり、連絡が取れなかったりすると、相続放棄はできません。

また、「借金は多いけれど、被相続人の自宅だけは手放したくない」というご希望もあるかもしれません。

今回は、このような複雑な状況を解決するための**「限定承認」「相続財産管理人」**の活用法について、相続の専門家が解説します。


限定承認:借金の負担を負わずに遺産を引き継ぐ

限定承認は、相続財産に借金がある場合でも、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産(借金)を引き継ぐことができる制度です。

  • 相続人全員で手続き: 限定承認は、相続人全員が共同で家庭裁判所に申し立てる必要があります。
  • 財産から借金を精算: 遺産の範囲内で借金を清算するため、万が一借金がプラスの財産を上回っても、相続人自身の財産で返済する必要はありません
  • 残った財産は相続できる: 借金を精算した後、プラスの財産が残った場合は、それを相続することができます。

この限定承認は、特に被相続人が個人事業を営んでいたケースや、借金がいくらあるか不明な場合に有効な解決策となります。

相続財産管理人:行方不明の相続人や複雑な事案を解決

相続財産管理人とは、家庭裁判所によって選任され、相続財産を管理・清算する役割を担う専門家です。通常、弁護士が選任されます。

以下のような、当事者だけでは解決が困難なケースで、相続財産管理人が活躍します。

  • 行方不明の相続人がいる: 遺産分割協議には相続人全員の合意が必要ですが、連絡が取れない人がいる場合、手続きは進みません。このような場合に相続財産管理人を選任し、遺産分割を進めることができます。
  • 相続人全員が相続放棄した: 借金が多いため、相続人全員が相続放棄した場合、被相続人の財産は宙に浮いた状態になります。この時、相続財産管理人を選任することで、借金の清算手続きを行い、債権者とのトラブルを避けることができます。
  • 自宅だけは手放したくない: 借金が多いものの、被相続人の自宅だけは残したいという場合、相続人全員が相続放棄をした上で、相続財産管理人に不動産を買い取る旨を申し立てることで、借金の負担を負うことなく自宅を確保できる可能性があります。

限定承認の手続きの注意点

限定承認は、非常に複雑な手続きです。特に、以下の点に注意が必要です。

  1. 3ヶ月の期限: 相続開始を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があります。
  2. 官報公告: 裁判所に認められた後、官報に公告を行い、債権者に対して債権を申し出るよう促さなければなりません。
  3. 相続税・所得税: 限定承認で不動産を売却する場合、譲渡所得税が課税される可能性があり、専門家である税理士に相談しておくことが重要です。

複雑な相続は、専門家への相談が必須

相続は、法的な知識がないと対応が難しい問題です。特に、借金が絡む相続、事業承継、行方不明の相続人がいる場合など、複雑なケースでは、当事者だけで解決しようとすると、かえって事態が悪化し、大きな不利益を被る可能性があります。

当事務所では、お客様の状況を丁寧にヒアリングし、最も適切な解決策を提案します。限定承認の手続き代行から、相続財産管理人の選任申立て、債権者との交渉まで、一貫してサポートいたします。

お一人で悩まず、まずは私たちにご相談ください。

弁護士が教える!遺言書があっても遺産分割協議が必要なケース

2025-08-31

「遺言書があれば、遺産分割協議は必要ない」─そう思われている方は少なくありません。故人の最終意思を記した遺言書があれば、その内容通りに相続手続きが進み、円満な相続が実現すると考えるのは自然なことです。しかし、残念ながら、遺言書があったとしても、すべての相続手続きが自動的に完了するわけではありません。

実際には、遺言書に不備があったり、内容が不完全だったりする場合、あるいは相続人全員が異なる意思を持っていたりする場合など、故人の意思を尊重しつつも、改めて相続人全員で話し合い(遺産分割協議)を行う必要が生じることがあります。遺言書は、相続争いを防ぐための「有効な手段」ではありますが、円満な相続を保証する「万能薬」ではありません。

本稿では、相続問題に精通した弁護士が、遺言書があっても遺産分割協議が必要となる具体的なケースと、遺言執行者の役割の重要性について、多角的な視点から解説します。

「遺言書があるから大丈夫」では済まない5つのケース

遺言書は、故人の最後の意思を尊重するための法的な効力を持つ文書です。法的に有効な遺言書があれば、原則としてその内容が優先され、遺産分割協議は不要となります 。しかし、以下の5つのケースでは、遺言書が存在しても相続人全員による遺産分割協議が必要になります。  

1. 遺言書そのものに法的な不備・瑕疵がある

遺言書が無効になる原因は、その形式に不備がある場合です 。特に、自筆証書遺言は、財産目録を除き、全文、日付、氏名を自書し、押印するという厳格な要件を満たさなければなりません 。たとえ故人が丁寧に作成したものでも、日付の記載がなかったり、押印を忘れていたりすると、法的に無効と判断される可能性があります。  

また、遺言書が有効であったとしても、遺言書に財産を受け取ると記載された人(受遺者)が故人より先に亡くなっていたり、相続放棄をしたりした場合は、その部分の遺言は効力を失います 。この場合、無効となった部分の財産について、改めて相続人全員で誰が相続するかを協議しなければなりません。  

これらの事態は、遺言書が持つ本来の目的である「円滑な相続」を妨げる結果につながります。遺言書は、単に故人の意思を書き記すだけでなく、法的な要件を確実に満たし、あらゆる事態を想定して作成されるべき文書なのです。この観点から、専門家による助言は不可欠と言えるでしょう。

2. 遺言書に全ての財産が記載されていない

遺言書は、故人の全ての財産を網羅しているとは限りません。故人が遺言書を作成した後に取得した不動産や預金、あるいはデジタル遺産などの新たな財産が記載漏れとなるケースが多々あります 。  

例えば、遺言書に「A銀行の預金は長男に相続させる」と記載されていても、遺言書作成後に開設したB銀行の口座や、急増している仮想通貨、さらにはオンライン証券口座などが記載されていなければ、これらの財産は遺言の効力が及ばないため、別途遺産分割協議を行う必要があります 。  

また、不動産についても、登記簿上の地番ではなく住所で記載されていたり、私道部分の記載が漏れていたりと、正確性を欠くことで、記載漏れと見なされ、後から協議が必要になる場合もあります 。このような記載漏れを防ぐため、遺言書の最後に「この遺言書に記載のない一切の財産は〇〇に相続させる」といった包括的な条項を設けることが有効な対策となります 。  

3. 全財産を特定の相続人へ包括的に遺贈する内容である

遺言書は、特定の財産を指定して相続させる「特定遺贈」と、財産の全部または一部の「割合」を指定して相続させる「包括遺贈」に分けられます 。例えば、「全財産を妻に遺贈する」といった内容であれば、具体的な財産の分け方を定めていなくても、妻が全てを単独で承継できるため、原則として遺産分割協議は不要です 。  

しかし、「全財産の3分の1を長男に相続させる」といった包括遺贈の場合、長男は他の相続人とともに、どの財産を、どのような方法で分けるかを協議する必要があります 。例えば、土地が1つしかない場合、その土地を売却して現金を分け合うのか、あるいは特定の相続人が土地を相続する代わりに、現金で代償金を支払うのか、といった具体的な分割方法を決める必要があるのです。包括遺贈は公平な意思表示に思えますが、現実の財産分割においては、新たな話し合いの必要性を生じさせることがあります。  

4. 相続人全員が遺言書とは異なる分割方法を望んでいる

遺言書は故人の意思を最大限に尊重すべきものですが、相続人全員が合意すれば、遺言書の内容と異なる分割を行うことが法的に認められています 。遺言書の内容が、相続人の感情的な問題や、現実的な事情(例えば、長男が地方に移住したため、実家を売却したいなど)に合わない場合、相続人全員の同意があれば、遺言書を無視して改めて遺産分割協議を行い、協議書を作成することができます 。  

ただし、この場合、相続人以外の第三者への遺贈(受遺者)がある場合は、その受遺者の承諾も必要となります 。また、遺言執行者が指定されている場合は、その同意も必要となり得ます 。当事者同士の話し合いだけでは感情的な対立が生じやすいため、第三者である弁護士に依頼することで、冷静かつ円滑な協議を進めることが可能となります 。  

5. 遺留分を侵害する内容の遺言書である

遺言書で特定の相続人に全財産を集中させる場合、他の相続人の「遺留分」が侵害される可能性があります 。遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人(配偶者、子ども、直系尊属)に法律で保障された、最低限の遺産取得分です 。  

遺言書がこの遺留分を侵害していても、遺言書自体は法的に有効ですが、遺留分を侵害された相続人は、遺留分を侵害した相続人に対して「遺留分侵害額請求」を行い、侵害された分に相当する金銭の支払いを求めることができます 。これにより、せっかく遺言書を作成しても、死後に遺留分を巡る争いが発生し、訴訟に発展するリスクが生じてしまいます 。  

遺留分侵害額の計算は、故人の財産だけでなく、生前贈与や負債なども考慮する必要があるため、非常に複雑です。当事者だけで正確な計算を行うのは困難であり、専門的な知識が求められます。

遺留分侵害額の計算式は次の通りです 。  

遺留分侵害額の基本計算式

  • 遺留分侵害額 $ = $ 遺留分額 $$ (遺贈または特別受益の価額) $$ (遺留分権利者が相続によって得た財産額) $ + $ (引き継ぐ借金の額)
  • 遺留分額 $ = $ 遺留分算定の基礎となる財産額 $ × $ 個別的遺留分の割合

この計算式からも分かる通り、専門的な知見がなければ正確な金額を算出することは難しく、結果的にトラブルを招く原因となりかねません。

遺言執行者の役割と重要性 – 円滑な相続のための要

遺言書があっても円滑な手続きが困難な事態を回避するための鍵となるのが、「遺言執行者」の存在です。遺言執行者は、遺言書の内容を確実に実現する役割を担い、相続財産の管理から名義変更まで、遺言の執行に必要な一切の行為を行う権限が与えられています 。  

遺言執行者がいるからこそスムーズに進む手続き

遺言執行者が指定されている場合、相続人や受遺者は遺言執行者の行為を妨げることができず、手続きへの協力義務を負います 。これにより、相続人同士の意見がまとまらない場合でも、スムーズに手続きを進めることが可能になります。  

遺言執行者が特に力を発揮する場面

  • 不動産の名義変更(相続登記):遺言執行者は単独で不動産の所有権移転登記を行う権限が認められています 。これにより、受遺者が単独で手続きを進めることができ、他の相続人全員の協力が必要となる事態を避けることができます。  
  • 預貯金の解約・払い戻し:遺言執行者は、金融機関の預金口座を単独で解約し、相続人や受遺者への払い戻しを行うことができます 。遺言執行者がいない場合、通常は相続人全員の署名と実印が必要となり、手続きに多大な労力と時間がかかるため、この権限は非常に重要です。  

遺言執行者がいる場合といない場合とでは、手続きに大きな違いがあります。例えば、預貯金の解約手続きでは、遺言執行者がいれば単独で必要書類を金融機関に提出し、手続きを進めることができます 。一方、遺言執行者がいない場合は、相続人全員の署名と実印が押された遺産分割協議書が必要となることが一般的です 。不動産の名義変更(相続登記)についても同様で、遺言執行者がいれば単独で登記申請ができますが、いない場合は不動産を相続する相続人全員が共同で申請する必要があります 。これらの書類収集や手続きの準備は、遺言執行者が主導して行うため、相続人全員で協力して行う場合に比べて、手続きが円滑に進む傾向にあります 。  

遺産分割協議をスムーズに進めるには?|相続財産の特定とよくあるお悩み

2025-08-30


遺産分割協議をスムーズに進めるには?|相続財産の特定とよくあるお悩み

相続は、誰にとっても避けて通れない問題です。大切なご家族が亡くなった後、残された財産をどのように分けるか、という問題に直面します。

特に、遺言書がない場合は、相続財産の特定から始まり、遺産分割協議を経て、合意を形成する必要があります。

今回は、相続の対象となる財産の種類と、遺産分割協議を進める上でのよくあるお悩みについて解説します。


相続財産の特定:何が相続の対象となるのか?

相続財産と聞いて、多くの方が現金や不動産を思い浮かべるでしょう。しかし、相続の対象となる財産には、私たちが思っている以上に多様なものが含まれています。

プラスの財産

  • 不動産: 土地、家屋、建物など。
  • 現金・預貯金: 銀行の普通預金や定期預金など。
  • 有価証券: 株式、投資信託、国債など。
  • その他: 自動車、貴金属、骨董品、ゴルフ会員権など。

マイナスの財産

  • 債務: 借金、ローン、連帯保証債務など。

連帯保証債務は、被相続人が誰かの連帯保証人になっていた場合、その地位が相続人に引き継がれます。相続開始後に初めてその事実を知るケースも少なくありません。故人の遺品整理をする際は、連帯保証契約書がないか注意深く確認することをおすすめします。

相続財産に含まれるか判断に迷うもの

一般的な財産以外にも、相続財産に含まれるかどうか判断が難しいものがいくつかあります。

  • 生命保険金請求権: 受取人が指定されている場合、その保険金は受取人固有の財産とみなされ、相続財産には含まれません。受取人が相続放棄をしても、保険金は受け取れます。ただし、受取人が「被相続人自身」と指定されていた場合は、相続財産となります。
  • 死亡退職金・遺族給付金: 公務員や会社の退職金、遺族年金などは、その支給根拠が法律や会社の規定で定められているため、受給者固有の権利とされ、相続財産とは認められないのが一般的です。
  • 祭祀財産(祭具・墳墓など): これらは、相続財産ではなく、慣習に従って承継されるとされています。また、香典は、一般的に喪主への贈与とみなされるため、相続財産にはあたりません。

これらの財産は、専門的な判断が必要となるケースが多いため、不安な場合は弁護士に相談することが賢明です。


遺産分割協議の成立に向けて

遺言書がない場合、遺産分割協議は相続人全員で行う必要があります。この協議が成立しないと、預貯金の払い出しや不動産の名義変更が単独でできず、手続きが滞ってしまいます。

しかし、遺産分割協議を進める上で、以下のような「よくあるお悩み」に直面する方が多くいらっしゃいます。

1. 「他の相続人の連絡先を知らない」

  • 亡くなった夫の相続で、疎遠な兄弟姉妹が相続人となるケース。
  • 行方不明の相続人がいるケース。
  • 相続人の一人が海外に居住していたり、他国に帰化していたりするケース。

このような場合、まず戸籍を辿って相続人を特定し、住所を調査する必要があります。しかし、個人でこれらの調査を行うのは非常に手間と時間がかかります。

2. 「話し合いができない、まとまらない」

  • 特定の相続人が財産を独占し、話し合いに応じない。
  • 相続人同士の仲が悪く、感情的な対立から交渉が進まない。
  • 相続財産に不動産が含まれており、分割方法について意見が食い違う。

このような問題に直面した場合、ご自身だけで解決しようとすると、事態がさらに悪化する可能性があります。

遺産分割協議のお悩みは弁護士にご相談を

遺産分割協議には、相続人同士の協力が不可欠です。しかし、全員が協力的な状況ばかりではありません。

このような時、弁護士にご依頼いただくことで、以下のメリットがあります。

  • 相続人の調査・特定: 連絡先が分からない相続人がいる場合でも、弁護士が職権で戸籍を調査し、相手方を特定します。
  • 交渉の代行: 感情的な対立を避け、弁護士が代理人として冷静に交渉を進めます。相手方が話し合いに応じない場合でも、法的手段を用いて解決を図ります。
  • 適正な解決策の提案: 法律や過去の判例に基づき、お客様の状況に最適な遺産分割の選択肢を提案します。
  • 手続きの一括サポート: 複雑な書類作成や各種手続きをすべて代行し、お客様の負担を大幅に軽減します。

当事務所では、お客様のお悩みを一つひとつ丁寧にお聞きし、最適な解決策をご提案します。相続問題でお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

「実家」の相続で後悔しないために:トラブルを避ける3つの秘訣

2025-08-29

弁護士野条健人の相続ブログ|「実家」の相続で後悔しないために:トラブルを避ける3つの秘訣

こんにちは。弁護士の野条健人です。 今回のブログでは、ご相談の中でも特に多い、「住んでいる家」、つまり実家の相続についてお話ししたいと思います。

実家は、単なる建物ではありません。 ご両親との思い出が詰まった場所であり、ご家族にとってかけがえのない大切な宝物です。 しかし、その実家が、相続の場面でご家族を不幸にする**「争族」**の火種になってしまうことがあります。

「まさか、うちが?」と思われるかもしれませんが、実家をめぐる相続トラブルは、どんな仲の良いご家族にも起こり得ることなのです。


なぜ「実家」が相続トラブルになりやすいのか

実家の相続がトラブルに発展しやすい理由は、主に以下の3つです。

  1. 感情的な価値が絡むから 実家には、金銭的な価値だけでなく、ご家族の思い出や歴史といった「感情的な価値」が大きく絡んでいます。 「この家は私が生まれてからずっと住んでいた家だ」 「両親が大切にしていた庭は、絶対に手放したくない」 このような感情的な想いが、冷静な話し合いを妨げ、対立を深めてしまうことがあります。
  2. 簡単に分けられないから 現金や預貯金のように、100万円を2人で50万円ずつと簡単に分けることができません。 「兄が住むから、兄が全部相続すればいい」 「いや、妹も平等に権利があるだろう」 というように、具体的な分割方法を巡って意見が対立することが多々あります。
  3. 相続人の状況がそれぞれ違うから 長男は実家に住んでいて、長女は遠方に嫁いでいるなど、相続人一人ひとりの状況は様々です。 「実家に住む私は、このまま住み続けたい」 「私には持ち家があるから、代わりに現金を公平に分けてほしい」 こうした異なる希望が、話し合いを複雑にしてしまいます。

このように、実家は「分けにくい」「評価が難しい」「感情が絡む」という3つの要素が複雑に絡み合い、トラブルに発展しやすいのです。

「実家」の相続で後悔しないための3つの秘訣と解決事例

では、実家の相続で後悔しないためには、どうすれば良いのでしょうか。 私がこれまでご相談を受けてきた経験から、最も重要だと感じる3つの秘訣と、具体的な解決事例をご紹介します。


秘訣1:親の意思を明確にする

最も重要なのは、ご両親が生きている間に、実家をどうしてほしいか、その意思を明確にしておくことです。

「実家は長男に継がせたい」 「将来誰も住む予定がないから、売却して、そのお金を子どもたちで分けてほしい」

ご両親がどう考えているか、子どもたちが知っているだけで、相続開始後の話し合いは驚くほどスムーズに進みます。 しかし、口頭で伝えるだけでは不十分です。ご家族間でトラブルが起きた場合、「親はこう言っていた」という水掛け論になりがちだからです。

解決事例:遺言書が導いた円満な解決

ご両親が亡くなり、実家をめぐって長男と長女が対立していました。 長男は「自分がこのまま住み続けたい」と主張し、長女は「売却して公平に分けてほしい」と譲りませんでした。 話し合いは平行線をたどり、両者の溝は深まるばかりでした。

しかし、ご両親が公正証書遺言を作成していたことが判明しました。 遺言書には、「実家は長男に相続させる。その代わり、長女には預貯金をすべて相続させる」と明記されていました。

長女は当初、遺言書の内容に納得しませんでした。しかし、私は長女に対して、ご両親がなぜこのような遺言書を作成したのか、その想いを丁寧に説明しました。 「お母様は、お兄様が今後も実家を守ってくれることを望んでいらっしゃいました。同時に、長女であるあなたにも経済的に公平な分配をしたい、という想いがあったのです」と。

ご両親の深い愛情を知った長女は納得し、最終的に遺言書の内容通りに相続手続きを進めることができました。 この事例のように、ご両親の明確な意思を遺言書として残すことが、何よりもご家族を守ることにつながるのです。


秘訣2:客観的な視点で不動産の価値を把握する

感情的な対立を避けるためには、実家の価値を客観的に把握することが重要です。

「この家は、築年数も古いから価値はないだろう」 「いや、駅から近くて土地の価値があるはずだ」

というように、個人の主観で評価額を判断すると、必ずと言っていいほど対立が生まれます。 そのため、不動産鑑定士や税理士といった専門家に依頼し、客観的な評価額を算出することが非常に有効です。

解決事例:鑑定評価で納得した相続

相続財産が実家だけだったケースです。 長男が実家を相続する代わりに、妹に代償金を支払うことで合意はしましたが、代償金の金額で揉めてしまいました。

長男は固定資産税評価額(約2,000万円)を基準に代償金を支払おうとし、妹は時価(約5,000万円)で計算すべきだと主張しました。 私はまず、ご両親が遺された大切な実家で、兄妹がこれ以上争ってほしくない、という両者の想いを汲み取りました。 その上で、不動産鑑定士に依頼して、実家の客観的な価値を算出し、その鑑定評価額(約3,800万円)を代償金の基準とすることを提案しました。

当初は難色を示していた両者でしたが、「自分たちの主観ではなく、専門家が公正に判断した金額なら」と納得し、最終的に鑑定評価額を基準に代償金の金額を決定しました。 この事例のように、客観的な第三者の視点を入れることで、感情的な対立を避け、冷静な話し合いに持ち込むことができるのです。


秘訣3:弁護士に早めに相談する

実家の相続でトラブルになりそうだと感じたら、できるだけ早めに弁護士に相談することをお勧めします。

「まだ話し合っている最中だから…」と、ご相談をためらう方もいらっしゃいますが、話し合いがこじれてしまう前に、弁護士にご相談いただくことが、早期解決への何よりの近道です。

弁護士は、単に法律を適用するだけでなく、皆様の間に立ち、冷静な仲介役として話し合いをスムーズに進めることができます。 また、実家の評価方法、代償金の金額、税金の問題など、専門的な知識をもって、皆様の状況に合わせた最適な解決策を提案します。

「もし、売却するならどうすればいいの?」「兄に代償金を支払う余裕がない場合はどうなるの?」 といった、皆様の漠然とした不安を解消し、具体的な解決への道筋を示すことができます。

まとめ

実家の相続は、ご家族の絆を試される、非常にデリケートな問題です。 しかし、適切な準備と、必要であれば専門家のサポートを得ることで、トラブルを未然に防ぎ、ご両親が残してくれた大切な実家を、ご家族みんなが納得できる形で守ることができます。

もし、実家の相続でお悩みでしたら、お一人で抱え込まず、ぜひ一度ご相談ください。 皆様の不安を少しでも和らげ、ご家族の絆を守るお手伝いをさせていただければ幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

弁護士法人かがりび綜合法律事務所 弁護士 野条 健人

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